齊藤工も心酔、小曽根真が奏でる音と人のジャンクション。
小曽根真の新アルバム『Trinfinity』のジャケット写真やアーティスト写真を、齊藤工が撮影した。ピアノ、プロデュースを手がける小曽根と、ベーシストの小川晋平、ドラマーのきたいくにとのトリオ。音楽に魅了された3人を齊藤はいつものモノクロームで捉えた。 ことの始まりは23年11月発売号のフィガロジャポン連載「活動寫眞館」にて、小曽根のパートナー神野三鈴を撮影した際、神野が齊藤に「小曽根の撮影をしてみないか」、と誘ったことがきっかけだった。神野三鈴を撮影している時のBGMには小曽根のジャズが流れ、クールで洗練されているのにもかかわらずユーモアを感じさせるその音楽は、撮影のムードを大いに盛り上げてくれた。 「元来、私の両親が真さんのファンで、我が家には幸せなことに小曽根真の音楽が当たり前にありました。そして時は経ち、真さんの奥様である神野三鈴さんがご出演くださった私の監督作『blank13』をきっかけに、ご夫妻との宝物のようなご縁をいただき、現在にいたります。こんなにも周りを照らす、愛にあふれた方々は他にいません」(齊藤)
小曽根真/MAKOTO OZONE
1961年、神戸市生まれ。ピアニスト、プロデューサー、作曲家など音楽におけるマルチな才能を発揮。83年、バークリー音楽大学ジャズ作・編曲科を主席で卒業。アルバム『OZONE』で世界的デビュー。ブランフォード・マルサリス、チック・コリア、ゲイリー・バートンなどトップミュージシャンと共演。ビッグバンド、No Name Horsesも率いる。2003年にはグラミー賞ノミネート、18年に紫綬褒章受章。24年1月に小川晋平ときたいくにとを迎えたアルバム『Trinfinity』(ユニバーサルミュージック)を発表した。
現在施設全体を大改装中の渋谷Bunkamuraの、オーチャードホールにて、23年12月17日、小曽根真クリスマス・ジャズナイト2023が行われた。「Beyond Generations」というテーマで行われたこのライブ、小曽根がコロナ禍以降、自身が大切な考えとして抱いているテーマであり、小曽根も名だたるミュージシャンに見いだされ機会をもらった経験から、若手と演奏することで自身も刺激されて化学反応を生み、オーディエンスに楽しんでもらうことを願って演奏するものだ。 小曽根本人も「会場全体がスパークして奇跡が生まれる」とコメントしていたように、熱量の大きなライブだった。前後半の演出をまったく違え、各ミュージシャンの技巧とエネルギーを味わいに訪れたオーディエンスは心奪われた。奏でられる音楽は限りなく雄弁で、楽器たちが自由に楽しくおしゃべりをしているような演奏だった。 ピアノの音色に息もできないほど興奮させられるのはもちろんだが、舞台上にいて現場監督としてライブを進行していく小曽根はゼウスのようでありながら、同時にキューピッドのようにミュージシャン同士、ミュージシャンたちと観客を結び付けてしまう。クリエイターでありながらマネージメントにも長けている、芯からカッコいい人物だ。 「ライブにおける真さんは圧倒的な主人公なのだけれど、気がつくと他の演奏者や楽器、もちろん我々客席、さらにはスタッフの方々までをも主人公にしてくれている。それも、とても自然に、心地よく。この場所にいられて幸せだなと、心から実感させてもらっています」(齊藤) ライブ終了後の舞台裏で、ベースの小川晋平とドラムのきたいくにとに会った。メロディアスな小川のベースの安定感、そして、舞台上で髪を振り乱しながら激しく繊細に叩くきたいのドラム。観ていて、聴いていて、底知れぬ色香を感じた。小曽根の企んだエネルギーのケミストリーから生まれた躍動感あふれるステージを終えて、リラックスしたムードのふたりが素敵だった。