「税込1050円→税抜1050円」という巧妙な“便乗値上げ”?はびこる
例えば1000円の商品なら、以前は消費税を含めた1050円と表示しなければならなかった。しかし、総額表示をしなくてよくなったことで、1000円の商品は、「税抜き1000円」「1000円+税」などといった表示が可能になった。 この措置の背景には、来年も消費税率アップ(8→10%)が予定されていることがある。小売業者にとって、短期間に何度も値札の張り替えを強いられるのは負担が重い。だが、税抜きの表示にしておけば、来年にも税率が予定通りアップした場合でも、「1000円+税」といった同じ表示で乗り切れるためだ。この総額表示の義務の解除は、昨年10月から2017年3月までに限る特例で認められている。 消費者の感覚としては、これまで税込1050円だった商品やサービスが、1080円になるなら、納得せざるを得ない。しかし、1050円という表示を維持したまま、1134円という何とも半端な価格を徴収することに対しては、「姑息な便乗値上げだ」という憤りの声が上がるのも仕方がないだろう。 この点、消費者庁はどう考えているのか?担当者は「確かに、その類の相談は何件も寄せられていますが、それを一概に便乗値上げだとは言えません」という、少し意外な答えが返ってきた。 「便乗値上げというのは、理由もなく本体価格を上げること。しかし、このところ仕入れ値などコストも上がってきています。要は、もし本体価格も上げているのなら、その理由の説明が必要ということ。消費税率のアップを超える値上げをしておきながら、『消費税アップのため』としか説明しないのは言葉足らずですね」と釘を刺した。 いずれにせよ、アベノミクスの恩恵を実感しにくい一般の消費者にとって、負担ばかりが増すのは厳しい。消費税アップにかこつけた便乗値上げには、しっかり目を光らせたいところだ。消費者庁は、便乗値上げ情報・相談窓口(電話03-3507-9196)を設置しており、情報提供を呼びかけている。 (文責・坂本宗之祐)