「最も炎上した映画は?」世界から批判殺到の過激作(4)最高級の名作でも…暴力がエグい…気分が悪くなる傑作
映画は万人が楽しめる娯楽の王様である。一方、影響力が強すぎるため、世間の規範から外れた作品に対しては、上映中止を求める抗議運動が吹き荒れたりする。今回は、タブーを踏み越えてしまったがために、世界各国で上映が禁止された問題作を紹介。露骨な性描写で物議を醸した作品から宗教上の理由でバッシングを受けた映画まで幅広くセレクト。今回は第4回。(文・寺島武志)
『時計じかけのオレンジ』(1971)
原題:A Clockwork Orange 製作国:アメリカ 監督・脚本・製作:スタンリー・キューブリック 原作:アンソニー・バージェス キャスト:マル 【作品内容】 本作の舞台は、荒廃した近未来のイギリス。夜の街にはギャングが毎夜のように闘争が繰り広げている。ギャングを率いるアレックス(マルコム・マクダウェル)は高校生だが、学校には通わず昼夜逆転の生活。彼が率いるギャングの悪行は日に日に増すばかりだ。 ある日、アレックスは強盗のために押し入った家で、老婦人を撲殺し逮捕される。 アレックスには、懲役14年の実刑判決を下されるが、収監されて2年が経とうとしていた時、「ルドヴィコ療法」の被験者となることと引き換えに刑期短縮を持ち掛けられるのだが…。 【注目ポイント】 アンソニー・バージェスのディストピア小説を、巨匠スタンリー・キューブリックが映像化した本作。管理された全体主義と、その中で暴力やセックスに明け暮れる若者の無軌道さのジレンマを描いている。 アメリカでは大ヒットし、ニューヨーク映画批評家協会賞、ヴェネツィア国際映画祭などで受賞され、アカデミー賞作品賞でもノミネートされた名作と呼ばれる一方で、過激な暴力描写が原因で上映禁止とした国も多かった作品だ。 アメリカではX指定(18歳未満は鑑賞禁止)となり、さらにイギリスでは本作に影響を受けた16歳の少年がホームレスの男性を殺害する事件が勃発。社会問題に発展した。 事件後、キューブリックのもとには多くの脅迫状が届き、身の危険を感じたキューブリックは自ら、本作のイギリスでの公開を中止するように要請したと言われている。 本作はイギリスで30年近くもの間、上映禁止であったが、キューブリック逝去後の1999年になってようやくビデオが販売された。
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