巧妙すぎる手口…業界にその名を轟かす「大物地面師」がターゲットの物件横の「駐車場」を借りた衝撃の理由
年収は2000万円
「年収はだいたい2000万円でしょうか。ゴルフはひと月に10回、仲間といっしょに行きます。ほかの趣味といえば、銀座の高級クラブで飲み歩くことぐらいでしょうか。クレジットカードを10枚ほど持っており、目的に応じて使い分けています。ハワイのコンドミニアムも所有していますが、自分の自由になる資産ではありません」 北田は地面師のなかでも、五指に入る大物といわれる。今回の積水ハウス事件でも、その足跡を残している。地面師事件の取材を始めたばかりの頃、私は偶然その北田と会ったことがある。場所はJR新橋駅前にあるホテルの喫茶ロビーだった。 夕刻になると会社帰りのサラリーマンで賑わう新橋駅界隈は、一杯飲み屋やスナックだけでなく、喫茶店も多い。最近はスターバックスやドトールなどの手軽な店が増えたが、なかには昭和の風情を残した昔ながらの店も残っている。事件屋と呼ばれる詐欺師やその情報を得ようとする不動産ブローカーたちは、なぜかそんなレトロな空気が好みのようだ。 たとえばニュー新橋ビルの3階にある喫茶店をのぞくと、そこでは紫煙のなかで驚くほどきわどい会話が飛び交っている。隣の席のサラリーマンやカップルたちは、そんな話には興味がないらしく、自分たちの会話に没頭している。というより、聞き耳を立てたところで、話の中身があまりに込み入っているので、チンプンカンプンになるのが関の山だろう。 新聞や雑誌の記者たちは、新橋に集うこの手の事件屋やブローカーから情報を得ようと、足しげく通う。かくいう私が北田の顔を初めて見たのも、まさにそんな取材の場だった。ある地面師とホテルの喫茶ラウンジで会っていたときだ。テーブルを挟んで話し込んでいると、入り口付近から初老の男が駆け寄ってきた。 「遅くなってすみません」 濃いベージュのカジュアルなジャケットに身を包んだその男が、目の前の地面師に封筒を手渡した。取材している私のほうを向くとこう言った。 「どうも取り込み中みたいですね。あとで連絡しますよ」
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