宮田愛萌、2冊目となる小説『あやふやで、不確かな』に込めた思い「登場人物にムカついたり、嫌いになったりしても、いいんです」【インタビュー】
『きらきらし』(新潮社)で小説家としてデビューした宮田愛萌が、2冊目となる書き下ろし小説『あやふやで、不確かな』(幻冬舎)を執筆。2024年4月17日(水)に発売された。今作のテーマは「コミュニケーションの難しさ」。4組の恋人たち、一人一人の心情を丁寧にすくい上げるように書いた作品だという。そんな本作について彼女は「登場人物にムカついたり、嫌いになったりしても、いいんです。むしろ、そういう感情の動きを大事にしてもらいたいです」と語る。 【画像】宮田愛萌の撮り下ろし写真
◆2冊目の小説の発売、おめでとうございます。 ありがとうございます! ◆執筆を終えたいまの率直なお気持ちを教えてください。 「よかったー!」って感じです(笑)。書き終わって、形になって一安心しています。先ほど初めて実物を手に取ったのですが、そのときに「本物だ!」って思いました。データなどで表紙を見てはいたのですが、こうやって「本」という形になると、全然印象が違って。うれしいですね。 ◆私も事前に本文のデータをいただいていましたが、こうやって本になってパラパラめくるだけで、ちょっと気分が違うというか。 違いますよね! ◆紙でめくるならではの楽しさ、魅力ってあるなと改めて思いました。 そうなんです。本によって、手触りが全然違うんですよね。今回もめっちゃ手触りがいいんですよ! ブックジャケットのカバーも、ツルっとしている訳じゃないけど張りがあって。手触りでも楽しめるのがよきです。 ◆アイドルグループを卒業されてから2冊の小説を発売した宮田さん。そういった仕事をやっていきたいと思った理由を改めて教えてください。 元々、本に関わる仕事をしようと思って生きてきたんですよ。ただ、アイドルが好きだったこともあり、「これも何かの経験になるはず!」とオーディションを受けてみたら、合格をいただけて。驚きました。アイドルは憧れであり、自分には縁のないものと思っていたので。本に関わる仕事への遠回りになってしまったかも、と感じる瞬間もありました。でも、アイドル時代にも応援してくださる方々に本を紹介する機会をいただけて。それがきっかけで本を好きになったという方がいらっしゃったり、大学の学部を迷っていたけど、日本文学科に行くことに決めましたと言ってくださる方もいたり。なかには、「愛萌さんの大学の後輩になりました」と報告してくれる方もいたんですよ。そういう声を聞いていると、アイドルになって本当によかったなと思いました。自分の好きなことをみんなも好きになってくれる感じがして、うれしかったですね。 ◆すてきなお話です。 アイドルグループを卒業してからも、本に関わる仕事をしたいという気持ちは変わらずで。ただ、小説を書きたい、小説家になろうということはあまり思っていませんでした。というのも、何か文章を書くのはずっと好きだったので、仕事にしなくてもいいかなという気持ちがあったんです。私生活でもきっと何かを書くだろうからって。それなら、出版社に就職するとか、図書館の司書になるのがいいかもなーと、思っていたんです。 ◆そうだったんですね。 でも、ありがたいことに小説執筆のお話をいただけて。「それなら、頑張ってみようかな」と書いてみて、実際に本になったのを見たら、思っていた以上に感動して! 欲張っちゃいけないと思いつつ、「これからもいろいろな人に読んでもらいたいな、伝えたいな」という欲が出ちゃいました(笑)。 ◆Web小説のサイトがあったり、自費出版みたいな形もあったりはしますが、こうやって出版社さんから本を出すというのは、特別なことというか。 そうですね。あとは表紙を書いていただいたり、出版社の担当者さんと相談して一緒に作ったりすることが、一人で書くのとは大きく違うなと実感しています。自分一人で書いているだけだと分からないこと、できないことがいっぱいあるんですよね。 ◆いろいろな方と一緒に作っていき誕生した『あやふやで、不確かな』。テーマは「コミュニケーションの難しさ」です。こういったテーマで書こうと思ったきっかけを教えてください。 私、人の気持ちが分からないんです。何なら自分の気持ちもよく分からないと思っていて。いろいろな本を読んできて、そのときに書いてある感情と自分の感情が一致するかどうか比べて、「ここにうれしいと書いてある。あぁ、これがうれしいってことなんだ!」ってラベリングをしているんです。だから、まだ分かっていない感情がいっぱいあって。でも、みんなはそういう作業をしないというのを聞いて驚きました。誰かとこういう話をするまでは、みんな自分と一緒だと思っていたんです。 ◆なるほど。 感情の言語化ってすごく難しいと思っていたのですが、みんなは「私はできている」と言うんですよ。うれしいときにはうれしいという感情を出しているって。それなら、人は自分以外の誰かの気持ちも分かるのかなと思ったんです。でも、考えれば考えるほど、自分以外の人間と完全に分かりあうことなんて、やっぱり不可能だよなって。分かり合えたらと願ってしまうけれど。ただ、そういう矛盾もなんかいいなと思って、「コミュニケーションの難しさ」というテーマで小説を書きました。