WBC世界バンタム級新王者、中谷潤人が語る4団体統一、そして井上尚弥との夢の対戦!
2月24日、バンタム級転向初戦でWBC王座を獲得し世界3階級制覇を遂げた中谷潤人(26歳)。海外での評価も急上昇する中谷に本誌は昨年末から密着。15歳で単身渡米したボクサー人生、恩師との絆、そして、将来的に対戦が期待される井上尚弥への思いを語る! 【写真】中谷潤人、衝撃のKOシーン ■衝撃的だった「見えない左」 「歩んできた道や、人生で積み重ねてきたものを発揮する場所。どういう覚悟を持ち、どういう経験を積み、どういう生き方をしているのか。試合を見て感じてもらえたらという思いでリングに上がっています」 右は試合翌日、「中谷潤人にとってボクシングとは?」と筆者が問うた際の答えだ。 2月24日、中谷は3階級制覇をかけWBC世界バンタム級王座に挑戦した。相手は昨年7月にノニト・ドネアを下して王座を獲得したアレハンドロ・サンティアゴ(メキシコ)。戦前は苦戦説もささやかれたが序盤から試合を支配し、6ラウンドに左ストレートでダウンを奪い、直後のラッシュでTKO勝利。左ストレートは会場の東京・両国国技館が一瞬静まり返るほどの衝撃的な一撃だった。 中谷は所属するM.Tボクシングジム(神奈川県相模原市)のほか、米ロサンゼルスを練習拠点としている。名トレーナーのルディ・エルナンデスの指導を受けるためだ。 「ルディからは『手数が必要だ』とアドバイスを受けて、単発の攻撃に終わらず4発、5発、6発と畳みかける練習を繰り返し、1ラウンド5分を10ラウンドとか、長丁場になっても集中力を切らさず戦える準備をしてきました」 序盤は静かな立ち上がりだった。自分より13cmも身長の低いサンティアゴに合わせるようにかがんで構え、相手のパンチが届かない距離を保った。動き始めたのは5ラウンド、戦況を見切った中谷は徐々に手数を増やす。そして6ラウンド、アップライトにスタイルチェンジして一気にギアを上げて勝負を決めた。 「サンティアゴ選手は、接近戦になれば手数が多くなるタイプなので、そういう状況は避けたいと考えていました。4ラウンドまでは警戒して下がりすぎない、プレッシャーを受けすぎないことを意識して、そこはうまくコントロールできました。(4ラウンド終了時の採点で)ポイントは取れていたし相手のパンチもよく見えた。 5ラウンドに入るとき、ルディからは『いけると思ったら練習してきたワンツーを2回、3回と繰り返せ』と指示されました。試してみたらうまくパンチを当てられたので、6ラウンドはさらにテンポを上げました」 試合後、サンティアゴはダウンした左ストレートが「見えなかった」と明かした。 見えない左――。 これには伏線があった。