高すぎる勉強代でした…1億8,000万円の高層タワマンを買った30代夫婦、「恒常的な赤字」を前に下した苦渋の決断【不動産のプロが解説】
物件の売却価格とローン残債の差額は「1,500万円」
彼らは不動産業者と相談し、タワーマンションを売却することにしました。 査定額は1億5,000万円。その時点での残債は1億6,500万円であり、いわゆる「オーバーローン」に陥っていました。売却するには、1,500万円分もの手出しのお金が必要でしたが、損失が出たとしても、夢のタワーマンションを手放すことを決意したのです。 この一件は、物件価格と残債の差額分を自己資金で賄えるうちに売却ができただけ、まだまだ良い事例です。そもそも「オーバーローン」の状態では、金融機関が売却を認めないケースが多く、行き詰まってしまうケースは少なくないのです。 世帯の経済状況が悪化し、ローンを滞納する事態に陥れば、金融機関が抵当権者となっているマイホームは、相場の7割程度の安値で競売にかけられることになります。競売での売却金額はローン返済に充てることになりますが、それでも残債がある場合、金融機関から一括返済を求められることになります。 ここで、一括返済ができなければ、残された選択肢は「自己破産」のみ。自己破産に至れば、住宅ローンの残債は免責になりますが、信用情報には大きな傷がつきます。 その後は、クレジットカードやローンも利用不可になる上、自宅が競売にかけられる際は、官報等でも物件情報が公開されるため、「住宅ローンを滞納した」という事実が周囲にも知れ渡ることになるため、注意が必要です。
経済的成功や物質的豊かさが幸福に結びつく訳ではない
マンション売却の決定は、夫妻の心に深い傷と経済的なダメージを残しました。しかしながら、この体験が2人に幸福の本当の価値を見直すきっかけをもたらすことになったのも事実。幸せとは、地位や成功や物質的な豊かさといったものを追い求めることばかりではないと気づくことができたのです。 「あまりに高すぎる勉強代でした」と振り返る拓也さんですが、それと引き換えに手に入れた新たな視点や価値観は、次のステップへと踏み出す彼らにとって心強い支えになったといいます。 人生における成功・幸福の定義とは、どのようなものでしょうか。 従来の価値観であれば、経済的成功や物質的豊かさの追求が、すなわち成功・幸福の追求だということになります。しかしながら、それらを追い求めた結果、拓也さんと麻衣さんのような苦境に陥ることもあるのです。 本稿でご紹介した事例は、経済的成功や物質的豊かさが、必ずしも成功・幸福が結びつく訳ではないことを示しているといえます。 これからの世代では、物質的な成功だけでなく、精神的な充足や社会的なつながり、自然との調和など、より多様な価値観が重視されることが予想されます。本稿の事例が、新たな幸せの形を模索し、人生の豊かさについて考えるきっかけとなれば幸いです。
西上正通