『相棒』川原和久×寺脇康文の同期コンビに胸アツ 右京の人柄のあたたかさに救われる
化学メーカーの研究員が、猛毒の神経ガスで殺害される事件が発生。その最中、別のところでは、小学生の誘拐事件が発生していた。『相棒 season22』(テレビ朝日系)第11話は、この一見関係のないふたつの事件が、調査を進めていくうちに繋がっていることが判明する。その裏には、ある母と娘の悲しい物語があった。 【写真】『相棒』元日スペシャル 謎を説く水谷豊と寺脇康文とトリオ・ザ・捜一 右京(水谷豊)と亀山(寺脇康文)は、化学メーカー研究員殺害事件で見つかった下足痕の捜査に駆り出された。捜査に行き詰まっていた捜査一課の面々が珍しく協力を依頼してきたのだ。伊丹(川原和久)曰く、「亀の手も借りたい」らしい。ニヤニヤする伊丹に亀山は「お手」のように手を差し出していた。今年も犬猿の仲といいつつ、傍から見れば仲の良い2人は健在のようだ。 右京たちは捜査の途中、道端に人気キャラクター・ほっぺ丸のぬいぐるみが、不自然に落ちているのを発見。事件性の有無を確認するため、持ち主を捜索することに。結果、小学生の男の子を持つ初音(映美くらら)というシングルマザーに行き着くが、なんだか様子がおかしい。何者かに脅されていることを察知した右は、誘拐事件を疑い、亀山と手分けをして捜査を開始する。初音の勤務先である玩具メーカーを訪れた右京は、「ほっぺ丸をデザインしたのは初音ではなく、凛(吉田凜音)という女性だが、彼女は自殺してしまった」という意外な事実を知る。一方の亀山は、何者かの指示を受けていると思われる初音を尾行し、動向を注視するが、やがて、ほっぺ丸のぬいぐるみを使って、神経ガスがバラまかれる危険性が浮上。体を張ってそれを阻止しようとする。 同じ頃、右京は、化学メーカーに務める登紀子(山下容莉枝)という女性の、不穏な動きを捉えていた。殺害された研究員の同僚によれば、登紀子はその研究員とたびたび話しており、ほっぺ丸のぬいぐるみに神経ガスを仕込む仕組みを作ろうとしていたというのだ。 実は、凛と登紀子は親子だった。凛は小さい頃から母親を元気づけるためにほっぺ丸の原型となる絵を描いていたのだという。だが、登紀子は凛を小さい時に遊園地に置き去りにし、姿を消していた。一方の初音は会社の先輩として凛のことを気にかけ、ほっぺ丸のデザインについてもよく相談に乗っていた。ほっぺ丸を知ったことをきっかけに凛を探し始めた登紀子は会社の社長から、凛が自殺したこと、そして凛は初音のパワハラに遭っていたことを聞かされたのだった。 自分で子を見捨てたのにもかかわらず、その子が死んだこと知ると逆上し、その原因となった人の子を誘拐する登紀子と、後輩も自分の子も見捨てず、登紀子の指示に従って必死に走り回る初音。同じ「母親」であっても行動から人に対する誠意の違いが浮き彫りになっていた。この対比が、より事件の犯人である登紀子の身勝手さを鮮明にしていたように思う。今にも泣き出しそうな表情をしながら子を助けるように懇願する映美くららと、同様の表情をしながらも冷徹な声を出す山下容莉枝の演技が端々で光っていた。 2つの事件が関係していて、しかも小学生の命がかかっているとなれば警察の総力戦である。化学メーカー研究員殺害事件の現場に残された下足痕の持ち主を見つけたという亀山は現場へ急行。問題の男に伊丹が声をかけ、逃げようとしたところを亀山が捕らえた。さすがは“同期コンビ”。息がぴったりである。捕らえた男から事情を聞いた右京は、亀山と伊丹を従えて家宅捜索へ。この「右京は、亀山と伊丹を従える」という構図は、これまで叶いそうで叶ってこなかった、”いつか見てみたいもの”のひとつ。真剣に仕事をする人の顔というのはどうしてこんなにもカッコよく、心が掴まれるのだろう。ずっと見ていたい一瞬だった。 「復讐の対象には自分も含まれていたのですね」と、右京は登紀子本人さえ気づいていたかどうかわからない気持ちも明らかにするように優しく声をかけた。悲しい物語の中で、ほっぺ丸のかわいさと右京の人柄のあたたかさに救われるような回だった。
久保田ひかる