宮城・南三陸で「ホヤビール」発売 琥珀色で味はスモーキー
東日本大震災で被災した宮城県南三陸町の水産加工会社が、三陸の特産水産物「ホヤ」を使ったビールを8月27日に発売し、早くも1000本を売り上げる人気商品となっている。元々震災前から開発が進められていた「ホヤビール」。津波で工場と店舗が流され、震災から4年半が経ってようやく発売にこぎつけた。 ホヤで作った「三陸の海鞘(ホヤ)エール」は、少しスモーキーな香りのする、炎のように赤いビールだ。南三陸産のホヤとホヤの殻を使って作られている。醸造段階でホヤの煮汁を麦芽・ホップと一緒に煮込み、ホヤ殻を沈め抽出したエキスを使うことで、琥珀色のクラフトビールを実現した。ホヤを使ったビールは世界的にも珍しいという。
開発したのは、水産加工・海産物販売の「山内鮮魚店」を運営する「ヤマウチ」(宮城県南三陸町)と「世嬉の一酒造」(岩手県一関市)。両社はもともと、牡蠣を使った黒ビール「オイスタースタウト」を共同で醸造した経験があり、震災前に同じく三陸特産のホヤを使ったビールを企画していた。 しかし、東日本大震災で、宮城県内のホヤの養殖施設も震災でほぼ全滅。2014年からホヤの出荷が再開し、今年は県内では震災前の4割まで生産量が戻った。山内鮮魚店も店舗と工場を失ったが、今年8月に新工場が完成。工場の完成に合わせ、ホヤビールの開発を再開した。 ホヤは、東北の珍味として知られ、関東から東北にかけて根強い人気がある水産物だ。その見た目から「海のパイナップル」とも呼ばれ、生のまま刺身や酢の物にしたり、干物、塩辛などに加工して消費される。主な生産地は、岩手県宮古市付近から宮城県金華山に至るまでの三陸海岸で、震災前は宮城県が生産量の9割近くを占めていた。 山内鮮魚店の山内恭輔店長は、「ホヤは、酒のツマミとしてビールに合うので、ビールにしても相性が抜群」という。店では、ホヤビールとホヤを一緒に購入する客も多いという。山内店長は「南三陸産の新鮮な真ホヤは、甘みがありやみつきになってしまいますよ」と、ホヤに馴染みのない人にも三陸産ホヤとホヤビールを薦めた。 「三陸の海鞘エール」は限定3000本で、山内鮮魚店と同店のオンラインショップで販売中。1本330mlで、税込み597円。 (中野宏一/THE EAST TIMES)