『イップス』キーマンは染谷将太? 篠原涼子とバカリズムが向き合った犯人の葛藤
“真犯人”はミコ(篠原涼子)の弟・黒羽慧(染谷将太)なのか?
一方、毎回ゲスト俳優が演じる犯人の多くは、何をやってもうまくいかないという負のスパイラルに日々を陥っており、そこからなんとかして脱出したい、無念を晴らしたいという気持ちが暴走した結果、殺人に手を染めてしまう。 ミコと森野だけではなく犯人の側もイップスに近い症状を抱えていたと言っても過言ではなく、だからミコは犯人に対して最後に「もがき続けたらリスタートできる」と声をかける。 元々、イップスとは、無意識の動作障害によって同じようなプレーができなくなるというスポーツに関連した言葉だが、本作ではスポーツ選手以外の人間にも当てはめ拡大解釈をしている。 犯人の姿を見ていると、人生がうまく行ってない人間は大なり小なりイップスに近い状態なのかもしれない。そこから抜け出すためにミコと森野はあがいているのだが、犯人と2人は表裏一体の、ボタンを掛け違えていたら、2人が犯人の側にいた可能性もゼロではない。だからこそ、2人は犯人の気持ちに寄り添うことができるのだろう。 そして最終話では、ミコと森野がイップスになるきっかけとなった「歪な十字架模倣事件」の真犯人が明らかとなる。 これまでのドラマを観ていると、ミコの弟で人権派弁護士の黒羽慧(染谷将太)が一番怪しいため真犯人に思えるのだが、その怪しさ自体がミスリードの可能性も高いため、最後まで油断はできない。 いずれにせよ「歪な十字架模倣事件」を起点としたミコと森野のイップスにまつわる物語は最終話で幕を閉じそうだが、せっかくミコと森野という魅力的なバディを作れたので、これでおしまいというのというのはもったいない。第2シーズンやSPドラマで、2人のその後を見たいものである。 その際には是非、バカリズムが脚本を書いたエピソードも番外編的なものでいいので実現してほしい。
成馬零一