“五輪出禁”ロシアによる「サイバーテロ」はもう始まっている…大会中は暴動勃発の危険性【五輪現地発 パリは今日もクレージー】#6
【五輪現地発 パリは今日もクレージー】#6 ボンジーア&ボンジュール! 連載1回目で「今大会の警備費は莫大」って話をしたけど、サイバーテロの危険性もかなり高い。いや、もうすでに始まっていると言っていいね。例えば先日、聖火リレーのスタートを記念してフランス空軍がアクロバット飛行を披露したんだけど、「青白赤」のフランスカラーのスモークを出すところを、間違って「白青赤」のロシアカラーにしちゃったっていう画像が拡散された。「あまりにひどいミス」って一時期、大騒ぎになったんだけど、後になって、これは加工された偽物だってことがわかった。こうしたフェイクニュースのほとんどはロシア発のものだ。 ❤ 写 真 ❤ ビーチバレー元日本代表「気合が入って脱いじゃいました」 ロシアはウクライナ侵攻やドーピング問題で、パリ五輪から締め出されている。14人の選手が出場予定だが、あくまで個人参加って形だ。旧ソ連時代から、アメリカに次いで圧倒的なメダル数を誇っていたロシアにとっては面白くないよね。 マイクロソフトの脅威分析センターによると、「ストーム1679」と「ドッペルゲンガー」という2つのロシアのグループがサイバーテロを行っているという。目的はロシアを出禁にしたIOC(国際オリンピック委員会)をこき下ろし、フランスやEUでテロの恐怖をあおることだ。 ■BBC、NYタイムス、Netflixのフェイクニュース 「ストーム1679」は2023年6月ごろから五輪に焦点を当てた活動を始めているみたいで、昨年の夏には「オリンピックは堕落した(Olympics Has Fallen)」なんてフェイクドキュメンタリーまで作っちゃったよ。ナレーションはなんとトム・クルーズ。AIで作られた本物と見分けがつかないフェイク・クルーズがIOC幹部の腐敗っぷりを糾弾するってストーリーだ。BBCとNYタイムズが後援し、ネットフリックスが制作したってことになってて、冒頭にはご丁寧に「ダダーン」という効果音と共に赤いNの字まで出てくる。 一方「ドッペルゲンガー」はパリ市民がテロを怖がって保険に入りまくっているとか大会チケットの4分の1が返却されたなんていうフェイクニュースを日々流し続けている。それも本物のフランスの日刊紙や雑誌のサイトを装っているから始末が悪いよね。大会中こうしたフェイクニュースにあおられて暴動が勃発する可能性だってある。 ところで、もう一つネット上で監視すべき大事なことがある。それは大会中の選手たちへの誹謗中傷だ。パリ五輪ではアスリートを守るため、メッセージやコメントにAIがフィルターをかける予定だ。心ない言葉で選手がコンディションを崩してしまうこともあるよね。これは国際サイバーテロと同じくらい許されないことなんじゃないかって思うんだ。(つづく) ▽翻訳=利根川晶子(とねがわ・あきこ) 埼玉県出身。通訳・翻訳家。82年W杯を制したイタリア代表のMFタルデッリの雄叫びに魅せられ、89年からローマ在住。90年イタリアW杯を目の当たりにしながらセリアAに傾倒した。サッカー関連記事の取材・執筆、サッカー番組やイベントで翻訳・通訳を手がける。「カカから日本のサッカー少年へ73のメッセージ」「ゴールこそ、すべて スキラッチ自伝」「ザッケローニ 新たなる挑戦」など著書・訳書多数。 (Ricardo Setyon/ジャーナリスト)