人生がアツくなる! 西野七瀬主演『ポケットに冒険をつめこんで』から学ぶ“社会の歩き方”
ある特定の世代の人々の胸をアツくさせるドラマが放送中だ。そう、『ポケットに冒険をつめこんで』(テレビ東京系)である。 【写真】『恋は光』西野七瀬インタビュー撮り下ろしカット このページを開いている方にわざわざ説明をする必要はないだろう。かつて、そしていまも、多くの者たちを熱狂させているゲーム『ポケットモンスター』(略して『ポケモン』)。アニメ、映画、カードゲーム、フィギュアなどなど、これまでに数々のメディアミックス展開を繰り広げてきたビッグタイトルが、ついに地上波放送の実写ドラマに。じつにユニークな作品に仕上がっている この一大カルチャーである『ポケモン』のはじまりは、携帯型ゲーム機・ゲームボーイ用のソフトとして1996年に発売された『ポケットモンスター 赤・緑』である。90年代後半に幼少期を過ごした人々のほとんどが、この作品を知っているだろう(そしてそのうちのほとんどが、実際にプレイしているだろう)。1990年生まれの筆者もそうだ。学校に行っても公園に行っても、つねに話題は『ポケモン』のこと。当時は寝ても覚めても『ポケモン』のことしか考えられなかった。 幼かった私にとって現実社会というものはまだ判然とせずボヤけて見えていて、『ポケモン』の世界とよく重なったものだ。いつもそばにはピカチュウやヒトカゲ、あるいはゼニガメやフシギダネなどがいて、日常のさまざまな“敵=困難”は、ゲーム内の敵の姿と重なって見えた。たとえばそれは、苦手な強化のテストであったり、反りの合わない教師やクラスメイトなどである。 ドラマ『ポケットに冒険をつめこんで』はこの要素をうまく取り入れている作品だ。西野七瀬が演じる主人公・赤城まどかは、学生時代から憧れていたクリエイターを目指して東京にある広告代理店に就職。しかし、思い描いていた日々とは違う。現実はそう甘くはない。いろんなタイプの大人たちに囲まれ、彼女は社会というものを知るのだ。 そんなおり、彼女は子どもの頃にプレイしていた『ポケットモンスター 赤』を手にし、再び仲間たちとともに冒険の世界へ。まどかが対峙する世界と『ポケモン』の世界とがクロスしていくことになる。 本作はいまの現実社会をあの『ポケモン』に見立てたもので、世代ド真ん中の筆者などにとっては胸が躍るものがある。事実、ゲーム内の敵と現実世界での敵との重なりを感じていたのは先述したとおり。幼いながらに頭をひねってプレイしていたわけだが、学校生活なども同じようなものだった。幼いながらにもいろいろと頭をひねらなければうまく前に進んでいくことはできなかったのだ。 この発想を“大人の世界”に転用したのが『ポケットに冒険をつめこんで』である。 いつからか私たちの多くは、上の世代の教えや自身の経験などから、社会を渡り歩いていく方法論のようなものを導き出すようになった。これがなければ大変だ。行き当たりばったりではあちこちで人間関係の渋滞が起きてしまう。そこでもしかすると一部の人間は誰かに相談を持ちかけるかもしれないし、自己啓発本などに助けを求めるかもしれない。もちろん、それはそれでいい。 しかし、ちょうど「ゆとり世代」に重なる私たちの世代には、人生の歩み方を教えてくれる『ポケモン』の存在がたしかにあった。そこで多くの者が他者との関係性の築き方や、仲間たちとともにレベルアップしていく術を学んだのではないだろうか。 高額を支払ってセミナーを受けるのもいいかもしれない。けれども私たちの多くは、幼少期に『ポケモン』の世界で仲間たちと傷つきながら成長してきた経緯がある。いまの自分とは無関係のように思えることを掘り返し、現在に反映させることは、いかにも人生を堪能している気がする。 主人公・まどかが活き活きしているのは、憧れのクリエイターの世界で悪戦苦闘しているからだけではない。かつて胸をときめかせた世界を、現実にトレースしているからである。 ひるがえっていえば、私たち誰しもの人生は、過去の記憶を掘り起こすことによっていくらでも輝けることを本作は証明している。あなたはどうだろうか。いまの私はまどかのようにかつての冒険心を取り戻し、この社会の荒波を乗りこなしていきたいと考えているしだいである。
折田侑駿