「スポーツマンガのいいところは、試合さえ終わればすべて解決!」『SLAM DUNK』の文法で“歴史もの”を描いたら…? 18年間続いた大人気マンガ『センゴク』の誕生秘話
『SLAM DUNK』の「三井寿の合流」を戦国で描くと?
多くのスポーツ漫画では、本大会を前にして「部内の紅白戦」や「近くの高校との練習試合」をします。たとえば『SLAM DUNK』は、そのあたりの序盤の作劇がとくにしっかり作られています。 『センゴク』でも、まさにそれをやりました。「試し合戦」です。 「試し合戦」とは、織田家臣団の内部で行われる模擬合戦。実戦さながら命懸け。出陣する武将の中で名を挙げれば「赤母衣衆」「黒母衣衆」、つまり信長の親衛部隊に登用される。 権兵衛は若き日の木下籐吉郎(秀吉)の配下に入り、「鬼柴田」こと柴田勝家や「豪勇無双」可児才蔵と激しい戦いを繰り広げる。信長に仕官した権兵衛にとっての最初のイベントであり、織田家臣団の顔見せでもあります。スポーツ漫画になぞらえれば、まず主人公のチームメイトを紹介し、同時に、チーム内のライバルとの切磋琢磨が始まるというわけです。 「部やチームになかなか入ってくれない強者が味方になってくれる」というお約束もしっかりやりました。『SLAM DUNK』でいうところの「三井寿の合流」です。 あの流れに沿って、「試し合戦」編では、軍師・竹中半兵衛との出会いを作劇しました。争いごとを好まないと言ってどの陣営にも決して与さない半兵衛を、権兵衛が必死に口説き落とそうとする。籐吉郎は、元々半兵衛と知己であるわけですが、自分だけの利害のために半兵衛を利用する形になっているんじゃないか、そしてそのことが半兵衛を傷つけているんじゃないか、半兵衛を強引に口説きたくはない、と彼ならではの人情を吐露します。 そうやって籐吉郎の人情も明らかにしながら、スポーツ漫画の「強者を仲間にする」という文法通りの作劇を行ったわけです。 ただ、当初「うまくいくんじゃないか」と目論んだラグビーのフォーメーションを参考に合戦を描く手法は、やってみるとうまくいきませんでした。サッカーなどを参考に考えたりもしたのですが、思ったようにあてはまらなかったのです。
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