写真：HOMINIS

同年代の友人である神木隆之介が「顔が彫刻」と誉めるほど、誰もが認める美形であり、その演技力も高く評価され、27歳という若さで大河ドラマ「青天を衝け」に主演した吉沢亮。現在30歳になったところだが、そのキャリアは順風満帆に見える。そんな吉沢が大河ドラマで渋沢栄一という大役を演じ切った後に、フジテレビの月９枠に初主演したのが「PICU 小児集中治療室」だ。 【写真を見る】吉沢亮が主演を務めるドラマ「PICU 小児集中治療室」 舞台は広い北海道。医師になった志子田武四郎(吉沢)は、札幌丘珠空港近くの丘珠病院に小児科医として勤務することに。ある日、武四郎は病院に新設された北海道で初めてのPICU(小児集中治療室)への異動を命じられる。 有名な子役が北海道での撮影中に命を落とした事故をきっかけに、「子どもの命を救うため」と、知事(菊地凛子)の肝いりで作られたPICUだったが、小児救急のスペシャリストである植野科長(安田顕)と辛い過去を抱えた綿貫医師(木村文乃)、植野と組んできた看護師の羽生(高梨臨)、そして新人の武四郎という4人だけでのスタートに。それでも、武四郎は栄転だと張り切っていたが、最初に運ばれてきた女児がいきなり死亡してしまい、救命救急医療の厳しい現実に打ちのめされる。 ちょっとお調子者の武四郎だが、根は優しすぎるほど優しく、先輩医師の綿貫から戦力外扱いされても、医師としての使命感を持って懸命に働く。思わず、そんな姿を応援したくなる、お仕事ものの王道の展開だ。 吉沢によると、武四郎は「幼なじみとか身内に対しては上から目線でものを喋るけど、外に放たれた瞬間、小心者になってしまう男」とのこと(番組公式サイトより)。患者の命を預かる医師であると同時に、そんなどこにでもいる若者である彼は、プライベードでも、親友の自殺未遂や母親の病気など、試練にぶち当たり、"人生ハードモード"になっていく。 治療の甲斐なく命を落とす子どもたちや、やがて武四郎が経験する大きい挫折。悲しみや衝撃のため目に涙を溜める場面も多いのだが、吉沢は序盤から終盤まで繊細な表情で情感豊かに演じている。どのシーンでも真に迫っていて、引き込まれる。 実は国宝級イケメンとしてすぐにブレイクしたようなイメージがある吉沢だが、1993～1994年生まれの俳優の中では、主演作は多い方ではない。映画「キングダム」シリーズや「東京リベンジャーズ」のように同年代が主演する作品で脇役に回ることもある。現在のポジションになるまでは苦労もあった吉沢と、医師にはなったものの、なかなか救急医療の場で権限を持たせてもらえない武四郎の姿が重なる。 ほっとひと息つけるのは、武四郎が高杉真宙、生田絵梨花、菅野莉央が演じる幼なじみたちとワイワイ話すシーン。男女4人なのにカップルにはならず、対等な関係で友情をキープしている姿は、微笑ましい。 母親役の大竹しのぶ、第1話に登場するイッセー尾形（「青天を衝け」でも共演）ら、アクの強いベテラン俳優と共演しても、堂々と渡り合っていて安心感があるのは、やはり大河ドラマで経験値がアップした後だからか。中でも、共演シーンが最も多いのは師匠的存在を演じる安田で、2人の関係が微妙に変化していくのを見守るのも楽しい。 もともとフジテレビのドラマは医療ジャンルに強い。1978年版の「白い巨塔」を始め、「医龍 Team Medical Dragon」「救命病棟24時」「Dr.コトー診療所」などの人気シリーズズを制作し、ヒューマニズムに溢れる医療ものには定評がある。「PICU」の金城綾香プロデューサーも「監察医　朝顔」を、脚本の倉光泰子は「アライブ がん専門医のカルテ」を作ってきた。「PICU」も2024年春に続編となるスペシャルドラマが放送される。 吉沢演じる「しこちゃん先生」こと武四郎も、まだまだキャリア数年目の若手。これから医師としての腕を上げ、PICUの治療においても中心的な存在となるなど、今後の成長をじっくりと描くシリーズになってほしい。 文＝小田慶子