【関東大学スプリングトーナメント2024】関東ベスト4の躍進を遂げたチームカルチャーは3&D(山梨学院大学 野溝利一)
「4年間で絶対に1回は勝ちたかった」東海大学に勝利
関東大学スプリングトーナメント2024でベスト4へ進んだ山梨学院大学は、過去最高の成績を残した。昨年まで絶対的なエースだった武内理貴(現・広島ドラゴンフライズ)が抜けた新チームは、「まだ試合に慣れていない選手が多く、プレッシャーもかかるので常にコミュニケーションを取ってきました」と4年生の #90 野溝利一は誰もがプレーしやすいように気を配る。野溝自身は人生初のキャプテンを任され、「初戦は緊張しすぎでガチガチになってしまって、古田さん(悟監督)から力が入りすぎ」と笑われた。駒澤大学を76-59で下し、ベスト8進出を懸けた東海大学との山場を迎える。 2試合目で緊張から解放された山梨学院大学は、コート内外で頻繁に声をかけ合う。昨年からコートに立ってきた2年生の #5 中村千颯、#9 齋藤晴、#98 スヴェトリシック イゴールがいずれも二桁得点を挙げてチームを勢いづける。先発で起用されたルーキー #14 菅野陸も臆することなく8点と活躍。東海大学に追い上げられる中、要所で4本の3ポイントシュートを沈めた野溝が突き放し、84-71で東海大学に初勝利を飾った。 「4年間で絶対に1回は勝ちたいと思っていました」と気合いを込める野溝は、東海大学付属諏訪高校出身。「高校の恩師である入野(貴幸)先生が相手のベンチにはいるので、個人的にはすごく強い想いが東海大学戦にはあります」と臨んだ結果、「1回は勝ちたい」目標を達成。しかし、シーズンはまだはじまったばかりである。1回で満足か?といじわるな質問をすると、「いや、もっと勝ちます。ここから勝ち続けます」と意識を高めた。 準々決勝は神奈川大学に62-61で辛勝し、初のベスト4入り。準決勝は専修大学に64-78、3位決定戦も大東文化大学に74-83と最後は2連敗を喫したが、大きな自信を得ることができた。
勝利に向かってまわりはじめた全員バスケのチームカラー
5試合を行い、3ポイントシュート成功数は33本、1本差で拓殖大学に続く2位。128本の試投数はトップに立ち、「小柄な分、3ポイントシュートを決めていくのが山梨学院の伝統」と野溝は言及する。もうひとつのチームカルチャーとして徹底しているのがディフェンスだ。昨シーズンから1部リーグへ昇格し、その強度を1シーズン経験してきたからこそ見劣りしない戦いぶりだった。 「試合に出られなかった選手たちも映像を見て、試合に出ていた選手たちが練習で体現することで、その質がどんどん上がっていきました。良い練習ができているからこそ、試合でも相手のコンタクトや迫力に負けないオフェンスやディフェンスができています」 日本のカルチャーに憧れてセルビアから留学してきたイゴールも2年目となり、コンビネーションプレーがスムーズになってきた。「頭が良いので、日本語もどんどん上達しています。積極的にコミュニケーションを取ってくれる選手ですし、それによってどういうプレーがしたいか、自分たちからもどう動いて欲しいかなどを伝えることが増えました」と理解度が深まった分、チームの成長も着実に見られている。 6月2日から本戦がはじまるルーキーズトーナメント(新人戦)も楽しみだ。「千颯ら2年生は昨年から試合に出ており、1年生の陸も経験がある選手です。古田さんも選手たちがのびのびプレーできるように、ミスを怖がらないように、チームとしてどんどんチャレンジしていくことを大事にしてくれています」と野溝は後輩たちに期待を寄せる。同じく、東海大学も昨年までの主力にケガ人が相次ぐ中、佐藤友や赤間賢人らルーキーが活躍。他チームにも粒ぞろいであり、ぜひ高校バスケファンに継続して注目してもらいたい。 昨年のリーグ戦は8勝11敗の9位に終わり、「上位チームにほとんど勝てなかったです。リーグ戦では、自分たちが成長していくことが大事であり、今年は上位チームを喰っていけるようなチームになりたいです」と野溝は言い、インカレベスト4の目標を掲げたことで視界が開けた。 「これまではうまく行かず、自分たちのチームカラーがどういうものかを模索し続けていました。最近になって、ようやくディフェンスからやること、そしてチームとして一人ひとりでやるのではなく、全員でやること。それが今年のチームカラーだと認識が一致し出してから、うまくまわりはじめました」 3&Dのチームカルチャーと、全員バスケをベースにするチームカラーで歴史を塗り替える。
泉誠一