【少子化と高校野球】たった1人で野球部守ったマネジャー、連合チームで最後の夏へ
少子化と高校野球<2> 高校野球界にも影響を及ぼしている少子化問題。甲子園出場を目指す高校球児の現状を2回にわたって紹介する。 第2回は宮城初の5校(涌谷、宮城水産、石巻北、迫桜、岩ケ崎)で今夏に挑む宮城県東部・北部連合。初戦は9日、宮城広瀬と対戦する。15年夏の宮城大会で8強入りしたこともある岩ケ崎の唯一の野球部員、千葉結奈(ゆな)マネジャー(3年)が最後の夏に懸ける思いを語った。 ◇ ◇ ◇ たった1人で、野球部を守ってきた。岩ケ崎唯一の野球部員、千葉マネジャーの“部活動”は孤独だ。選手の練習を手伝うのは、連合チームの活動がある休日だけ。1人の平日はグラウンドの草取りや石拾いなどの環境整備、さらにソフトボール部だった中学時代の経験を生かしてノックを打つ練習に励んだ。全ては、まだ見ぬ後輩のために-。雨の日は、試合の動画を見ながら場内アナウンスやスコアブックで記録をつけるなどマネジャー修行を続けてきた。 入部の動機は単純だった。父は同校野球部OB、3歳上の姉もマネジャーをしていたため、同じ道に進んだ。でも、当時のチームメートは3年生の選手1人だけ。「夏が終わったら先輩の引退と同時に自分も辞めよう」。入部3カ月で“引退”するつもりだったが「来年は(選手が)入部するかもしれない」と、希望を持って部活を続ける決断をした。 期待して迎えた2年目も、その次の年も、新入部員はいなかった。「また1人ぼっちか…」。でも「ここまで続けたのだから最後まで頑張ろう」と迷いはなかった。ひたむきな姿を見た佐々木伸監督が、夏休みに同地区の部員数が多い高校に、マネジャーとして練習参加を頼んでくれたこともあった。平日の孤独は変わらない。でも、グラウンドを見た人から「選手がいないのにきれいに整備されているね」と、ほめられて、うれしかった。 「岩ケ崎」の名前を1人で背負って、連合チームで高校最後の夏を迎える。「最後なので悔いが残らない夏にしたい」。守り続けてきたこれまでの思いを胸に、ベンチからグラウンドへ精いっぱいのエールを送る。【木村有優】