需要と供給のバランス、経済活動へのハードル……キーパーソンたちが考える“メタバース全体の課題”
それぞれがバーチャルでアクセルを踏む理由と、将来のイメージ
――先ほど挙げた『MyDearest JAM 2024 -OPEN THE GATE-』の制作チームがまさにその一例でしょうか? PONYO:『MyDearest JAM 2024 -OPEN THE GATE-』に加えて、アイドルフェス『Cinderella Fes.』や、シンガーイベント『SPELA』は、「VIPROD.」という有志制作チームで担当しています。そして「VIPROD.」はいま固定のメンバーでやっています。 前提として、自分はメンバー全員を役割に関係なく、心から尊敬しています。少しむず痒いですが、メンバーも同じように僕を信頼してくれていると思っていて、おかげで、プライベートも含めてすごく良好な関係を築けています。でも仮に、ここに新しいメンバーが加わったとき、そこから不協和音が生まれてしまうと、この関係が一気に壊れちゃうと思うんです。 チームのあり方にはいろいろありますが、自分は個人の利益に重きを置くよりも「チーム主体」であることが大前提だと思っています。チーム単位で成功することを目指すうえで、熱意をもって思いを伝えて、活動の未来・ビジョンを見せて、時には身を切り崩してやってみせたり、厳しいことを伝える。それらが全てが、最高のチームを作り出すのに必要なんです。 なので、スケールしようにも人を増やすのは簡単じゃない。その上で、人間関係という試練すら乗り越えられる仲間が増えた時に、次の大きな挑戦ができるようになる――それを無限に続けていく感じかなと思います。 ぴちきょ:質問してもいいですか? 弊社は事業として取り組んでいるので、PONYOさんとやり方が違うのは当然だし、おもしろいなぁと思って聞いていたのですが、そうしたチームを作った先のゴールってどのようなものなんでしょう? 経済活動が実現していない状態で走り続けるのって、かなりハードル高いと思うんですけども。 PONYO:フェーズを分けて考えています。いまはざっくり言うと「準備期間」です。 『VRChat』でなにか施策を行うとき、求められるスキルや知識は膨大です。そして、スキルや知識があることを理解していても、実際にふれてみないと全くわからないんですよね。「思ってたことと全然違う。 やれると思ってたこともやれなかった」ということが起こりがちです。 そして、参加者が10人くらいの小規模イベントと、数百人規模の視聴者がいるイベントとでは、その制作に携わるメンバーの挑戦に対する意欲レベルは段違いです。そんな「大きな場に挑戦できること」自体を、いまチームにいる人は魅力と感じてもらっています。そして、ここで得られた知識や技術を報酬としてもらう、という段階だと考えています。 ぴちきょ:いわゆるインターンみたいな感じですかね。 PONYO:言ってしまえばそうですね。なので、この報酬に価値があると考えられる方に対して、僕から声掛けをさせてもらっています。 ぴちきょ:それも割とハードルの高い話と言いますか。経験・技術を求めて常に新しいチャレンジをし続けるのか、同じ方向のまま進んで、誰か卒業したら新しくチャレンジしたい人を入れるかだったら、どっちになるんですかね? PONYO:基本的には後者にしかならないと思いますね。 ぴちきょ:となると、チームとしての継続性を維持するのがすごい難しそうだなって思って。 PONYO:そこはもうバンド活動みたいな感じですね。脱退していく人もいるでしょうし、僕がいまチームの先頭に立って走っていますけど、僕が「もうできねえや」って思ったらその場でバンド解散です。 でも、情熱を持ち続けてやれば、いつかメジャーデビューできるのかな、みたいな。どう夢を共有しあって、ワンチームでやっていけるのかが大事だなと思っています。なにぶん、自分はこういうやり方しか知らなくって。けっこうハートでやってます。 ぴちきょ:なるほど! お話聞いてると、方向性が自分とは違っていて、あらためて面白いなって。私は「経済活動の場を作りたい」というのが一番の目標なんですよ。自分も含めて、どれだけ経済活動の範囲を広げられるか。「そこで仕事をして生きていける人を何人増やせるか」がテーマです。 お金を出す企業も、世の中のためになることをやりたい。そして、「世の中の役に立つ」ということには、どの企業もそれぞれの命題を持っています。そのためにメタバースを活用することで、メタバースという経済圏を広げ、人が働く場、生きられる場が増えることに共鳴してくれる企業さんと、弊社はお取り引きしたいと思っています。 そして、いまは『VRChat』を使っていますが、『VRChat』にこだわらず新しい生き方、新しいご飯の食べ方ができる人を作り、広げていきたいんですよね。 PONYO:それはすごいですね……素晴らしい。 ぴちきょ:ただ、どっちが優れているという話じゃないんですよね。いろんな方向性を持ってクリエイティブに向き合ってる人がいるのが、すごい面白いなって。 PONYO:そうですね。僕は守備範囲というか、自分が大切にできるものの範囲がとても狭くて。ただ、その範囲の中では、「絶対にあなたたちの将来が豊かになるよう成功させたい」っていう、熱い気持ちをもって普段やっているんですよね。なので、それ以外のところは、全然考えてないんですよね。 ――こうしてお話をうかがっていると、範囲に差はあれど、「関わってる人を幸せになるように」という姿勢は、お二人とも共通していますね。だからこそ、大きな反響があり、成功と言えるイベントを作り出せているのかなとも。立ち位置は少し違いますが、向いている方向はきっと一緒だと思います。 ぴちきょ:世の中でも、身近な人でも、強い思いとともになにかを良くするようにがんばるのが“仕事”だと思います! ただ、PONYOさんのような考え方を聞くのが初めてだったので、すごく興味深かったです。 PONYO:僕もすごくいい話を聞けました!