■　避難先でも尽きない今後の不安 　避難先ではどういった生活を送っているのか。 　それは人それぞれだ。個人で家やアパートを借りる人、親族の家に行く人もいるが、身寄りもなく経済的に厳しくて身動きが取れない人たちは避難施設に向かうことになる。 　ドネツク州からの避難民を数多く受け入れているドニプロ州の避難施設を訪ねた。ここの避難民は、ほとんどがドネツク州からで、ロシア軍が占領をすると予想されるポクロフスク近郊から逃げてきた人も多い。 　直接の戦火からは遠ざかったことで、少し安心しているようでもあったが、話を聞けた人々は皆、「この先どうしたらいいのか」と不安を口にした。 　ドネツク州から避難してきた男性も日本から来た筆者にこう訴えた。 　「国際社会にお願いがあります。私たちだけでは対処ができません。どうか助けてください。ここでの暮らしは一時的なものなら良いですが、長くは続けられません」 　避難前に戦争によって身体的に被害を受けた人もいる。8月末にドネツク州トレツクから避難してきたヴァレリーさんは、台所でお茶を飲んでいたときに砲弾が家の近くに着弾、飛んできた破片が左手に当たり指2本を失ってしまった。

■　避難施設の廊下には今後の避難民向けの寝具や電化製品 　女性同士が相部屋となる居室を撮影させてもらった。廊下には新たに避難してくる人たちが使う寝具や電化製品が雑然と置かれていた。 　部屋では個人で使える湯沸かしがある。飲料水は6リットルで12フリヴニャ（約45円）だった。 　トイレやシャワーなどの設備は共用。決められた時間に交代でシャワーを浴びに行くことになる。

■　さらに避難民が増えている 　避難所に身を寄せる人が抱える事情はさまざまだ。特に医療面でのサポートは深刻だ。8月末にポクロフスク市内から家族4人で避難してきたニコライさんと妻ミガラチェワさん。ニコライさんは難病を患っており継続して治療が必要だ。 　夫妻とともに避難してきた次男は働いていた会社が爆撃されて失業中だったという。飼っていた猫も一緒に避難してきた。 　「ここにいる多くがドネツク州から避難してきた人です。さらに避難民が増えているため、私たちは新しく施設を増やす予定で、設備を整えています」 　複数の避難施設の代表をしているイリヤさんが淡々と語った言葉は重い。