かまやつひろしはなぜ「ブルー・コメッツはずるい」と言ったのか メンバーの三原綱木が振り返るGSブーム、井上大輔、郷ひろみと紅白のバンマス
井上大輔さんの自死の悲しみ
郷と仕事を始めた後、ブルコメの盟友・井上大輔さんとレコーディングスタジオで再会する。井上さんが郷の「2億4千万の瞳-エキゾチック・ジャパン-」(84年)を作曲したからだった。 「聴いた途端に『いい曲だ』と思った。『大ちゃん、間違いなく大ヒットするよ!』と言ったことをおぼえています。実際に大ヒットしましたね。大ちゃんはブルコメのシングルレコードのA面もほとんどつくった。才能溢れる人でした」 井上さんは映画「機動戦士ガンダム」シリーズ第2作(81年)の主題歌「哀・戦士」もつくり、自ら歌った。この曲では哀(愛)の尊さを歌い上げている。同作の挿入歌や第3作の主題歌と挿入歌も手掛けた。 「ガンダムが大ちゃんの本当のサウンドなんだろうと思っています。ブルコメの曲だと、どうしても僕らメンバーを気遣いながらつくっていたでしょうから」 歌手に曲を提供する際もその歌手のことを気にしていたはず。 「大ちゃんはいい人でね。長く付き合ったけど、不愉快な思いをしたことが一度もない」 才能も人望もあった井上さんだが、目の手術の術後経過が思わしくなかったことと、8歳年下の妻の病気を苦にしたことから、2000年に自ら命を絶つ。58歳の若さだった。妻も翌01年に後を追い、自死した。
ブルー・コメッツは「ずるい」
音楽仲間が主催した井上さんの音楽葬で、かまやつさんが三原氏にこう言った。 「ブルー・コメッツはずるい。なんでもほかのグループより先にやれちゃうから」 フォークソングが流行すると、フォーク色を採り入れた曲をいち早くやれたということだった。これもメンバーが譜面を読めたから。曲があったら、すぐに演奏が可能だったためである。 「譜面が読めないとブルコメには入れませんでした」 三原氏が譜面には強いのは小学校3年生からクラシックギター教室に通ったためである。基礎から徹底的に学んだ。 「ブルコメを辞めた後の大ちゃんが作曲家として活躍し、僕がニューブリードのバンドマスターになれたのも譜面に強かったから。実は大きなことだった」