「いろいろ考えています」絶好調の田中碧が日本代表の主力になるために。追い求める3バック時の最適解【コラム】
「欧州では『うまい』があまり求められていない」
さらに言うと、田中碧らしい安定感あるパフォーマンスがチーム内外から評価され、10月にはクラブ月間MVPを受賞。試合を追うごとに存在感を高めているのだ。 「試合に出たのが10月からなので、自分としては特に大きな変化はしていないと思います。チームメートとの相性もあるだろうし、自分がしてほしいこと、味方がしてほしいことが分かりやすい。レベルも高いし、やっぱり味方に助けてもれてもらっている部分が多いのかなと感じます」と彼が現状を冷静に客観視していた。 改めて2021年夏にアカデミー時代から過ごした川崎フロンターレからデュッセルドルフに移籍した頃を振り返ってみると、異国のサッカー観や特性の違いに戸惑うことも多々あったという。 「ドイツに行って分かったのは、日本だと『うまい』というのがピラミッドの一番上に来て、その下に『速い』『強い』という武器があるというスタンスですけど、欧州では『うまい』があまり求められていない。『1対1で負けない』とか『点が取れる』ということが横一線というか、そういう違いを一番感じました」と当時の彼はしみじみと語っていた。 2度目の移籍となった今回は、そういった価値観の相違があると分かったうえで新たなクラブの扉を叩いた。だからこそ、迅速に主力の座をつかみ、躍動できている。やはりドイツでの経験は大きな意味があったのだ。
「フィットできているのかな」手応えは日本代表でも?
「新しいところでどうやって馴染むのかというのは、サッカー選手に限らず簡単ではないですね。自分をプレー・人間的な両面で理解してもらおうと思うなら、やっぱり最初は頑張ることも必要になってきます。今も課題は沢山ありますけど、リーズではある程度、フィットできているのかな」と本人も手ごたえをつかんだ様子。イングランドで確固たる地位を築きつつあることは、日本代表にも好影響をもたらすはずだ。 これまで田中碧が遠藤や守田の後塵を拝する形になっていたのは、デュッセルドルフというクラブでプレーしていた影響が少なくなかっただろう。昨季こそ、ブンデスリーガ1部昇格争いに参戦したものの、UEFAチャンピオンズリーグ(CL)に参戦するようなビッグクラブにいる2人とは、どうしてもハイレベルの経験値で見劣りする形になっていた。 けれども、リーズならプレミアに近い強度やスピード感の中でプレーできるし、勝敗に対するより大きな重圧を感じながら戦える。その積み重ねは間違いなく代表ボランチ争いにプラスに働くはずだ。 森保一監督も鉄板ボランチの2人だけで全てが解決するとは思っていない。オーストラリア戦のような予期せぬアクシデントが起きた場合、あるいは連戦時に3人を柔軟に入れ替えながら戦える方向に持っていきたいと願っているのだろう。