花澤香菜の“妥協しない”信念「役に全てをかける」演技哲学を語る
■薬売り役・神谷浩史の“圧倒的存在感”に「さすが」
2007年にフジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」にて放送された『モノノ怪』。スタイリッシュなキャラクターデザインに、和紙のテクスチャーなどCG処理を組み合わせた斬新な映像が話題となった作品が、令和に復活。放送15周年記念企画のひとつとして製作された『劇場版モノノ怪 唐傘』が、現在大ヒット公開中だ。女たちの情念が渦巻く大奥を舞台に、主人公・薬売りが“モノノ怪”の正体を追うことに……。クランクイン!では、物語の鍵を握っている北川役の花澤香菜にインタビュー。神谷浩史が演じた薬売りの印象のほか、作品にちなんで「これだけは捨てたくない」と思っているものなどを語ってもらった。 【写真】花澤香菜のインタビュー撮りおろしが満載! ――最初に台本を読んだ際、物語にどのような印象を抱きましたか? 花澤:大奥が舞台ということで、華やかな世界を想像していましたが、まったく違った世界観が広がっていました。“組織の中で自分を保ちながらどう生きていくのか?”ということがテーマになっていて、現代を生きている私たちも共感してしまう部分が多かったように思います。中でも北川は、特に多くの悩みを抱え生きる女性。友情、出世、周りからの目……その中で何を優先して生きるのが大切なのか? 私も彼女に共感するところがたくさんあり、考えさせられる物語になっているなと感じました。 ――北川役はオーディションだったのですか? 花澤:はい、そうです。中村健治監督はとても丁寧な方なので、世界観をちゃんと知ってから受けてほしいという思いがあり、ある程度の設定はすべて知らされた上でのオーディションでした。北川というキャラクターに惹かれて受けたのももちろんですが、中村監督とは以前『ガッチャマン クラウズ』でご一緒していたので、またご縁があれば良いなと。 ――今回の『劇場版モノノ怪 唐傘』では、女性同士の関係をまた別角度から描いていましたよね。 花澤:そうなんです。先ほども言いましたが、“組織の中で自分を保ちながらどう生きていくのか?”というところがテーマとなっている本作。アサとカメの関係性や絆がメインに描かれているので、多くの方は「大奥が舞台」と聞いて女性のドロドロを想像すると思いますが、また違った大奥を体感できる作品です。 ――北川は、その大奥の“情念”。難しい役どころだったかと思うのですが、どのような役作りを? 花澤:最初にアサに語り掛ける北川は、人形が映し出している“思念”なのだと、監督からお聞きしました。最後のモノローグは本物の北川なのですが、それ以前はすべて思念。なので「会話しているようで、していない」「かみ合わない不気味さ」ということを意識しながら演じていました。 ――他に監督から言われて印象的だったことはありますか? 花澤:北川が死ぬシーンで「救いを求めてほしい」と指示されたことです。追い詰められて生きる気力を失い、死へと向かう彼女が、実は救いを求めていたなんて。演じるのが難しいと思った部分でした。 ――北川を“渇き”から解放してくれたのが、薬売り。そんな薬売りの活躍について、また神谷浩史さんが演じた薬売りの印象も聞かせてください。 花澤:捉えどころのなさが魅力でありつつも、「この人なら何とかしてくれるだろう」という安心感。御年寄である歌山まで彼を信頼し、大奥の中に入れていますから。薬売りには唯一無二の存在感があると思いました。 そして、その圧倒的な存在感は、演じる神谷さんも同じく。舞台挨拶で監督が言われていましたが、「薬売りは何人もいて、仮面ライダーみたいなもの。最初の薬売りが1号だとしたら、今作の薬売りは2号」だと。「なるほど」とは思ったのですが、私がそれを言われたとしたら「真似をしてもいけないし、かと言って要素をなくしてはいけないし……」とすごく悩むと思うんです。ですが神谷さんは、その難題を見事に解釈して演じられた。さすがだと思いました。