この秋、文学史が身近に 「編集・編集者」テーマ展覧会、日本近代文学館と前橋文学館で
同誌の協力で、目次を模して作られた展示案内、700冊以上のバックナンバー、120周年記念特大号収録の年表を転写した特大クロス(布)50枚など会場づくりにもこだわった。
日本や文壇の歩みにも重なる「『新潮』7大事件」のパネル展示からは、当時の状況や空気も伝わる。
創業者、佐藤義亮が孤軍奮闘して日露戦争のさなかに創刊され、表紙に「軍国の文学を見よ」と書かれた創刊号はすぐ売り切れに。関東大震災や、先の大戦での休刊も経て、戦後は坂口安吾「堕落論」、太宰治「斜陽」などがブームに。昭和45年に割腹自殺した三島が当日朝、連載中の「豊饒の海」第4部の最終回を編集者に渡したエピソードなども紹介される。
ゆかりの作家たちのメッセージや、元同誌編集者の風元正さんによる文芸誌編集のQ&A、同誌に掲載され、今年芥川賞を受賞した九段理江さんの「東京都同情塔」の編集過程を語った杉山達哉編集長のインタビュー全文、九段さんとのメールの一部も展示。12月14日には2人の対談もある。
同館の萩原朔美特別館長は、「雑誌の編集は常に、今という時代はこうだと考えをまとめ、それを文字列表現に翻訳する作業」とした上で、同誌の歴史を踏まえ、「これからのメディアの在り方を考えるきっかけになれば」と展示に込めた思いを語った。(三保谷浩輝)