愛知・瀬戸のグランドキャニオンが消える? ── リニア工事の残土受け入れに名乗り
10月17日、国土交通省が工事実施計画を認可し、2015年以降に着工される見通しがたった「リニア新幹線」。品川~名古屋間が最速40分で結ばれるということで、名古屋の経済に与える影響は計り知れない。2027年の開業まで、この地方にとって大きなトピックスであり続けるに違いないが、その裏で愛知県瀬戸市にある一つの「密かな名所」が消えることになるかもしれない。
戦前から採掘。巨大な崖や地層がむき出しに
品川─名古屋間の距離286キロのうち約86%をトンネルが占めるリニアは、工事により沿線7都県でナゴヤドーム33杯強の約5680万立方メートルもの残土を生むと言われている。その受け入れ先探しも一つの課題であった。 各都県で少しずつ受け入れ先の目途が立つ中、まったくの白紙だった愛知県で名乗りを上げたのが瀬戸市の窯業団体だ。 「せともの」で知られる瀬戸市には、戦前から珪砂(けいしゃ)や陶土などを採掘している広大な土地がある。その光景は、巨大な崖や地層がむき出しになったアメリカの世界遺産・グランドキャニオンを彷彿とさせるとして、「瀬戸のグランドキャニオン」「瀬戸キャニオン」と呼ばれることもしばしば。愛知県内の工事で発生する残土を受け入れるのにも十分なキャパシティだ。 同市などによると、採掘が終わった場所は使用者が現状復帰する義務があるという。現在も、採掘が終わった場所から木を植えるなど、一部埋め戻しが始まっている。
受け入れが決まれば、この光景も変わる?
残土により消えてしまうかもしれない採掘場に足を運んでみた。現在は安全面を考慮して立ち入り禁止になっていたが、かつては採掘現場の近くまで入ることができ、陶土が削り取られた景観を見学することができたそう。しかし、現在も採掘場の南に位置する窯神神社からのみ一部を見ることができる。 撮影場所からの距離が遠くわかりづらいが、たしかに本物のグランドキャニオンのような崖や地層にも見えなくもない。ねらい目は窯神神社の駐車場(写真の場所)、または境内の石碑の裏側。訪れた時は木々が茂って見えにくかったが、これから寒くなるにつれ、葉が落ちて良好な視界が開けるかもしれない。 受け入れが正式に決定すれば、いずれこの光景も少しずつ変わり、やがて消えてしまうだろう。目に焼き付けるなら、今かもしれない。 (編集プロダクション エディマート)