漫画、アニメの「次」のコンテンツは中国もうらやむ日本の伝統文化? カギは大手メディアが仕掛ける「伝検」
2度目の危機のほうがはるかに深刻だ。西洋の大量生産の工業製品は経年劣化する。完成した時点が最高の品質で、だんだん劣化していく。一方で日本の伝統工芸の良さは経年美化と言って、メンテナンスは必要だが、時間の経過と共に美しさが増していく。 例えば代々使ってきた箪笥は、受け継がれていきながら磨かれ艶を出していく。しかし核家族化が進み、実家にあった古い物は家族がばらばらになると廃棄処分されていった。 また、衰退の大きな理由の1つに、学校で日本の伝統文化をほとんど教えてこなかったことがある。自分の国の文化なのに、具体的な教科もないし教える先生がいない。 かろうじて美術で日本画を教えることはあるかもしれないが、実際に使う機会もなければ鑑賞する機会も減っているので、その価値が分からないまま忘れられていく。 ――若い層が伝統文化の価値を学ぶのに、検定は一役買えそうか。 時事通信社は日本語検定にも設立時からかかわっているが、残念ながら受験者数が減っている。 漢検(日本漢字能力検定)と英検(実用英語技能検定)は別格で、学校の入学試験や就職試験という具体的かつ実利的なメリットがあるから学生も受けるのだが、教養系や趣味系の検定はどこも苦戦している。 一方で、若い人たちが伝統文化の価値に気付くためには、やはり勉強しないと分からないとも思う。伝統文化を学んで何のメリットがあるのか、と思われるかもしれないが、例えば観光業に携わる方や百貨店の店員、料理人の知識の幅を広げる意味では実利的だ。 時事通信社のビル1階に「銀座うかい亭」という鉄板焼きのお店があるが、うかいさんも伝検を支援する会員になってくれた。社長さんが、従業員の成長を促したいと。 お店では良い器を使っているが、その器の説明も出来ないようでは駄目だろうとおっしゃっていた。伝統文化にはストーリーがあるので、知っていればお客さんとの会話の幅も広がるかもしれない。 会員制度はまだ始まったばかりだが、プリンスホテルを展開し美術館なども持つ西武ホールディングスも、従業員の教育のためにと会員になってくれた。 ほかには歌舞伎の制作・興行を手掛ける松竹や、各地の工芸品の産地巡りツアーなどを企画する日本旅行、英字新聞で日本文化を発信しているジャパン・タイムズ、昨年夏に社会貢献活動として伝統工芸を支援する「MUFG工芸プロジェクト」を立ち上げた三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)も会員になっている。 伝験には3級・2級・1級の3つの段階がある。3級・2級は知識中心の問題になるが、(2級合格者が受けられる)1級は日本の伝統文化の歴史や存在意義を語り伝えられる「アンバサダー」にふさわしい合格基準を設けたいと考えている。3級や2級で基礎と応用の知識があること、1級でより深い知識を語れることを示せれば、就職活動にも使えるかもしれない。 外国に住んでいる日本人から、受験したいという問い合わせも何件かあった。その国で日本のことを聞かれてあまり答えられなかったから学びたい、ということだろう。多くの人に似たような経験があると思うし、日本の伝統文化は国際人必須の教養とも言える。伝検は海外留学や海外赴任を控えている人たちにもおすすめする。