松下洸平の“新規”を生み出し続ける人間臭さ 『スカーレット』から『放課後カルテ』まで
松下洸平の演技に潜む“人間らしい温度”
なぜここまで役柄を魅力的に見せることができるのか。それはどんな役をやっていても松下自身の温かみがにじむからではないだろうか。ドラマというフィクションのなかのキャラクターで現実には存在しないにもかかわらず、松下が演じると人間らしい温度が感じられるのだ。『#リモラブ』のアオちゃんも、『最愛』の大ちゃんも、『最高の教師』の蓮も、実際には存在しない。にもかかわらず、「いるかもしれない、いてほしい」と願ってしまう。どんなキャラクターを演じていても、そのままの役柄で日常にいてほしいと思わせるほどのリアリティがセリフ回しや表情、所作から生まれるのだ。 そして、その人間臭さを負の方向にも作用させることができるのが松下の強み。『MIU404』(TBS系)第2話の加々見役をはじめ、松下は殺人に手を染める犯人役を演じたことも。人間らしさをきちんと表現できるからこそ、マイナスな感情に囚われ、戻れないところまで進んでしまった人間の冷たさや恐ろしさを演じることも得意なのだ。死んだ感情を表現する芝居に驚かされることも多く、どんな役もやはり沼だと言わざるを得ない。 『放課後カルテ』で松下が演じる牧野は、これ以上ないほどに無愛想な性格のキャラクター。それでも、第1話の牧野先生の言葉のニュアンスには、ぶっきらぼうな態度のなかにある優しさがしっかりと感じられた。牧野の素っ気ない態度と、児童たちとしっかり向き合う目線のギャップによって、牧野先生沼と『放課後カルテ』新規が生み出されるのだろう。
古澤椋子