中国、領空進入を認めるも〝とんでも説明〟「気流の妨害」 石破首相は軍事活動の活発化に「極めて憂慮」と習主席に伝えたばかり
中国軍機が8月に長崎県五島市の男女群島沖で日本領空を初めて侵犯した問題で、日本政府は19日、中国政府が「領空進入」という表現で事実関係を認め、再発防止に努めると伝達してきたと明らかにした。ただ、中国側は気流や技術的な問題による「不可抗力」だと強弁し、明確な謝罪もない。識者は、中国側の言い分を容認すれば「侵犯が繰り返されかねない」と警戒する。 【画像】尖閣諸島を日本領と記した海外の地図 中国のY9情報収集機は8月26日午前11時29分から約2分間、長崎県五島市の男女群島沖を飛行した。周回していたコースを十数キロ程度外れた上、領空内を十数キロ程度飛行したとみられる。 領空侵犯について、中国側は「気流の妨害に遭い、乗組員が臨時的措置を取る過程で不可抗力による日本領空に短時間入った」とし、あくまでも「技術的問題で、領空に進入する意図はなかった」と主張したという。日本政府は説明の時期や日中双方の担当者など詳細については「外交上のやりとり」を理由に明言を避けた。 日本政府は、今回の中国側の説明を踏まえても領空侵犯との認識は変わらず、「主権の重大な侵害で全く受け入れられない」という従来の見解を維持した。 防衛省によると、当時の周辺海域では、中国軍機に対して緊急発進(スクランブル)した航空自衛隊の戦闘機の飛行に影響するような天候の変化はなかったとされる。日本側は「飛行に支障を来すほどの影響は考えにくい。大きくコースを外れることは想定できない」と疑問を呈した。 元陸上自衛隊中部方面総監の山下裕貴氏は「防衛省の指摘の通りで明らかに苦しい言い訳だ。中国軍機は見る限り、ジェット機ではなくプロペラ機であり気流に影響されやすい。ミスでも領空侵犯のリスクが想定できる天候ならば、自らの安全のためにも飛行を控えるのが普通だ。なぜ領空に近いところを飛ぶ必要があったのか、従来の飛行コースまで踏み込んで問い詰めるべきだ」と指摘する。 日中関係をめぐっては、石破茂首相が訪問先の南米ペルーで15日、中国の習近平国家主席と初めて会談したばかりだ。首相は中国の軍事活動の活発化に関し、「極めて憂慮している」と伝えていた。 山下氏は「米国のドナルド・トランプ次期政権が対中強硬になると観測されるなか、日中首脳会談のタイミングで『対日融和工作』を仕掛けた可能性もある。〝外交〟として終わらせたい気配もあるが、終わらせれば同じ口実で再び侵犯を繰り返されかねない。『おかしい』と言い続け、警戒することが重要だ」と語った。