美術館や博物館など、多くの文化施設が建て替え時期を迎えています。 　緑に囲まれ、白壁が印象的な「北海道立近代美術館」。 　道民にも馴染みのある存在ですが…。 北海道立近代美術館　松田俊也副館長 「階段も一部破損している部分が見られますし…」 札幌市民 「建物自体が古いからそれなりの施設かな」 　建設から、およそ半世紀。リニューアルに向けて議論が進められている北海道の文化拠点。 　構想から見えてくる文化施設のあり方を、もうひとホリします。 　年間に、平均でおよそ27万人が訪れる「道立近代美術館」。 　北海道の優れた美術作品などを常設展示しているほか、さまざまな企画展も開催しています。 　その近代美術館が抱えている問題が、オープンから47年を迎えた施設の老朽化です。 北海道立近代美術館　松田俊也副館長 「トイレについても古い、狭い、そういった意見を頂戴しています」 　問題点は、ほかにも…。 北海道立近代美術館　松田俊也副館長 「近代美術館では約6000点の作品を所蔵しています。（スペースが）埋められているのもあるし、奥から作品を取り出すのは苦労もある」 　作家の遺族から寄贈されたり、購入したりした美術品は増え続け、収蔵する作品数はオープン時の６倍以上のおよそ6000点にのぼります。 　これらの問題を解決するため、道は築50年を機に、それぞれかかる費用や休館期間が異なる「改修」、「新築」、「移転」の３つのリニューアル案を検討しています。 北海道教委文化財・博物館課　佐藤昌彦担当課長 「３つの案それぞれ利点や課題があるので、メリットやデメリットを整理して、今年度中にもリニューアルの基本構想を取りまとめるよう取り組む」 　施設の老朽化と、収蔵品の保存に悩む施設は、ほかにもあります。 釧路市立博物館（歴史担当）　城石梨奈学芸員 「（ここはどんな展示？）道東、特に釧路地域のアイヌ文化を紹介している展示です」 　釧路市立博物館です。タンチョウが両翼をひろげた形をイメージした建物は、完成から40年以上が経過。 　地域の自然や、アイヌ文化を伝える収蔵品は16万点を超えています。 釧路市立博物館（歴史担当）　城石梨奈学芸員 「ここまで古いアイヌのコレクションを持つ博物館は道内で数えるぐらいしかないので、そういうところが売り」 　この日は、釧路港に入ったクルーズ船の乗客が博物館を訪れていました。 クルーズ船ツアーから来館した人 「80％くらいの国々のいろんな博物館を行ったけど、ここはすごくいいです」 「歴史が大好きなので化石やいろいろな動物の種類を見られてとてもすばらしかった」 　博物館の重要な役割は「集め、伝える」こと。 　収蔵庫の中をのぞくと、そこには所狭しと棚や箱が並び、貴重な資料を保存するための工夫がうかがえます。 釧路市立博物館（植物担当）　加藤ゆき恵学芸員 「標本を捨てることは基本的にないので。（棚に）余裕を持たせながら、増えたらずらして。とはいえ全部入るのは無理ですし、標本棚を買うのもお金がかかることですので」 　市販の衣装ケースなどを利用して効率的に収蔵したり、利用されていない市の施設に一部の資料を移すなどして、新たな収蔵品の受け入れを止めないよう努めています。 釧路市立博物館　秋葉薫館長 「築40年たっていて、さまざまな傷みが出ているところもある、この建造物そのものも（建築家）毛綱毅曠（もづな・きこう）さんの作品。この先、未来に向けてわれわれの宝をどのように継承していくのかについて、専門家を交えこれから検討していく」 　釧路市立博物館も築40年以上。今後、建て替えが必要な施設は増え続けます。 　そんな中、補修工事で建物の寿命を伸ばす取り組みもあります。 　道は、公共施設の維持管理や更新にかかるコストを削減するためインフラの長寿命化を目指しています。 　江別市の「北海道立図書館」は築57年で老朽化が進んでいて、インフラ長寿命化の一環として、屋根や壁などの改修工事を16日から始めていて、築70年まで利用する予定です。 　博物館や美術館をどう残していくか。専門家に、課題とどう向き合うべきか聞いてみました。 　博物館学が専門の北海道大学の佐々木亨特任教授は、「施設の改修や改築が本当に必要なのか問われる時代」「地域に存在意義をアピールできなければいけない」「廃校舎などを第二の収蔵室に活用するなどの工夫も必要」と話しています。 　学びの場として、より良い形で未来に残してもらいたいと思います。