岩井勇気が「この2年間で一番好きなアニメ」と語る「チェンソーマン」<岩井勇気の推しアニメ>
様々なアニメ作品に精通しているハライチの岩井勇気さんが「大人にこそ観てほしいアニメ作品」を紹介するこの企画。今回は、10月14日(月)アニマックスにて一挙放送されるTVアニメシリーズ「チェンソーマン」を紹介。親が遺した借金返済のため、極貧生活を送る青年・デンジ(声:戸谷菊之介)。"チェンソーの悪魔"ポチタと共にデビルハンターとして暮らす彼は、ヤクザの裏切りに遭い、殺されてしまう。薄れる意識の中でポチタと契約し、悪魔の心臓を持つ"チェンソーマン"として蘇った彼の活躍を描くダーク・バトル・ファンタジーだ。2022年のオンエア以降、今に至るまで「一番好きなアニメ」と太鼓判を押すほどお気に入りだという同作の魅力を岩井さんに語ってもらった。 【写真を見る】口が悪くて倫理観も無視!の主人公・デンジが実に魅力的 ■デンジがすごい好き!アニメの主人公であんなに口が悪いヤツはいないでしょ 「チェンソーマン」が放送されてから今まで、「チェンソーマン」より好きな作品がないんですよ。主人公のデンジがすごい好きなんです。アニメの主人公であんなに口が悪いヤツいませんし、倫理観も無視する。でも、久々に主人公が一番好きなキャラクターの作品になりました。 デンジの魅力は、欲望もむき出しで打算的じゃないところ。第一話の後半で、ゾンビの群れに襲われているデンジが「てめぇら全員殺せばよぉ! 借金もパァだぜ!」とめった斬りにするシーンでは、悪意のない悪意を感じました。自分も思ってることをデンジが言ってくれることが多くて、もう共感しまくって。久々に主人公に惹かれて観ているアニメですね。 デンジのセリフを聞いていると、ハッとするんですよね。第9話「京都より」で、デンジが「な~んか、わかんねぇけど、てめぇらが悪い奴だってことだけはなんとなくわかったぜ。悪い奴は好きだぜぇ。ぶっ殺しても誰も文句言わねぇからな」と言って、笑いながら飛び上がって「死ねぇ!」と敵に斬りかかるシーンがあるのですが、むちゃくちゃ悪役のやることじゃないですか。でも、「確かに殺しても誰も文句言わないな」ってハッとさせられましたし、デンジのそういうところがすごい好きなんです。自分も、心の中での口調はデンジと同じですね。 第一話「犬とチェンソー」では、デンジが若いヤクザに「このタバコ食ったら100円やるよ」と言われ、笑顔で「いただきます」と口に放り込む場面があるのですが、このシーンも印象的でしたね。 そして、ラストでチェンソーマンとなったデンジに、リーダーのマキマさんが「君の選択肢はふたつ。悪魔として私に殺されるか、人として私に飼われるか。飼うならちゃんとエサはあげるよ」と言うんですが、デンジが「エサって、朝飯はどんなの?」と聞くんです。マキマさんが「食パンにバターとジャム塗って、サラダ、コーヒー、あとデザート...かな?」と言うと、デンジが「...最高じゃないっすか」って言って、スタッフロールが流れるんですけど、その終わり方もすごく良かったですね。 ■マキマさんって妖艶でリアリティのないエロさがある マキマさんは、女性キャラクターの中で、正直一番好きかもしれないですね。なんか妖艶で。「結局、男ってこういう女の人好きだよな」っていう感じがあるんですけど、リアリティのないエロさがありますよね。アニメキャラならではの「男の頭の中にある美女」といった感じがすごいしますよね。第5話「銃の悪魔」で、デンジが初めて胸をもんでみたけど大したことなかった、と落ち込んでいる時に、マキマさんがデンジの指を甘噛みしながら「デンジ君の目が見えなくなっても、私の噛む力で私だってわかるくらいに、覚えて」というシーンがすごいんですよ。ホントは絶対、何とも思ってなさそうな無慈悲な感じが、すごいいいんです。マキマさんを演じているのは、楠木ともりさんですが、今までの楠木さんのイメージではなかったので驚きがありました。可愛いようで可愛くないし、バケモノみたいで、セクシーさの中に人間味がないというキャラクターを演じるのは、大変だったと思います。 ハイクオリティなアニメを作り続けているスタジオ、MAPPAさんの作品とあって、印象的なシーンもたくさんありました。オープニングでデンジたちが交差点を歩いているシーンで、映像が音楽に合わせて少し巻き戻ったりするところもカッコいいですよね。アニメだからこそ描ける映像だけれども、実写にも寄っているというバランスがうまく取れている作品だと感じます。そして。第4話「救出」でのヒルの悪魔とデンジのバトルシーンは、ちゃんと大きなものが大きく見えるんですよ。「この敵、でかいな」とちゃんと思える遠近感がすごいな、と思いました。 デンジをはじめ、各キャラクターの立体感や人間味はもちろん、毎回変わるエンディングテーマも素晴らしい「チェンソーマン」。この2年間に誕生したアニメで最も好きな作品です。 取材・文=中村実香 岩井勇気●1986年生まれ。幼稚園からの幼なじみである澤部佑とのお笑いコンビ「ハライチ」として活躍。新潮社『僕の人生には事件が起きない』 『どうやら僕の日常生活は間違っている』が累計20万部突破。放送されるアニメ作品はすべてチェックし、毎日放送「岩井 狩野 えびちゅうの推しかるちゃー」やABEMA「SHIBUYA ANIME BASE」など、漫画やアニメに関する番組でもMCを務める。
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