1,300億円超の新病院計画 医師会会長に聞く統合再編の行方
■救急医療 病院到着までに平均30分
さらに、救急医療の課題も挙げられます。 「(医師や病院が)分散しているために効率が悪いですよね。また、重複した医療機能を持っているために同じ病気でも患者さんどこ行ったらいいかとなる」 救急車から受け入れ病院に連絡をしますが広島市では、現場の滞在時間が平均19分。病院への搬送時間が平均11分と、合わせて平均30分かかっています。病院がすぐに受け入れられない理由としては、医師やスタッフなどの人と病院機能の分散などが挙げられています。 松村会長は、病院を統合することで、「迷わずに受診できる、県民にとっては非常に安心感があると思う。新病院に行けば必ず見てもらえるということになる」とメリットを強調します。
■住民からは不安の声も「待つ時間も長くなるでしょうし」
分散した医療資源を集めることで、人材不足や医師の偏りを解消し、迅速で高度な医療が受けられる態勢を目指す新病院。広島市内4つの病院を統合するほか、舟入市民病院の持つ小児診療や土谷総合病院の小児循環器診療など一部の医療機関の機能も集約し、診療科目は41、1千床にする予定です。 一方、「集約」について、県病院近くに住む人からは、不安の声も聞かれます。 「県病院があるので近くに住んでいる。病院としてはまとまっていたほうがいいんでしょうけど、一カ所にまとめられると待つ時間も長くなるでしょうし」 「近いし何かあったらすぐここ(県病院)にかかりつけとかあるので、なくしてほしくない」
■再編は『試金石』 2030年度開院予定
新病院は地域全体に高度医療を展開するための基幹病院。地域の拠点病院と連携して、中山間地域の医療機関までいきわたるようネットワークを築いていく方針ですが、松村会長はこの再編はある意味で『試金石』だといいます。 「一時診療した後に大きい病院、次の病院に紹介するシステムが本当は望ましい。その医療の流れが必ずしも役割分担の上に成り立っていないわけですから」 「今後の課題は、人材をこの新病院に集積できるか。年代を集めて、機能を集めて、広島の医療の中心的な役割を果たして、県民の命と生活を守るということに尽きると思います」 現在、統合される病院について、県立広島病院は医療体制を残すことも検討されていますが、中電病院は閉院する方針。また、舟入市民病院や、土谷総合病院は小児診療機能が移りますが、それ以外の診療は続くとみられています。 2030年度に開院する予定の新病院。既存病院の動向も含め、医療体制がどのように構築されるのか、注目されます。