昔のパート仲間が、老後は毎月「夫婦で旅行」に行っているそうです。パート時代は同じような暮らしだったと思うのですが、なぜ老後の暮らしに“差”が出たのでしょうか…?
夫婦の年金受給額は配偶者の収入に左右される
ここまで扶養内でパート勤務をする主婦の年金受給額について見てきましたが、夫婦2人で受け取る年金額は夫の収入によって変わります。仮に、夫が大企業の部長であった場合と、中小企業の部長だった場合の年金受給額について比較してみましょう。 まず、会社員の年金受給額は基礎年金と厚生年金です。基礎年金の受給額は前記のとおり納付月数で計算されるため、ここではどちらも満額の6万8000円(月額)を受け取れるとします。 一方、厚生年金は収入により受給額が変わります。厚生労働省の令和5年賃金構造基本統計調査によると、大企業の部長職では賞与を含んだ平均年収は約1300万円。中企業の場合は約1030万円、小企業では約822万円となっています。 年収での厚生年金の受給額について、三井住友銀行の年金試算シミュレーションで試算したところ、平均年収が1300万円の場合で約14万5000円となりました。上記から、大企業の部長職の夫と扶養内で働く主婦が夫婦で受け取れる年金額は、下記のようになります。 夫・厚生年金14万5000円+夫・基礎年金6万8000円+妻・基礎年金6万8000円=28万1000円 一方で、総務省統計局の家計調査によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯(夫婦高齢者無職世帯)の消費支出は約25万円です。ただし、この金額は住居費が2万円程度(持ち家も含むため)となっているため、賃貸物件に住んでいるなど住まいの状況によってはさらに費用がかかるでしょう。 また、官公庁の旅行・観光消費動向調査 によると、2024年4-6月期(速報)の日本人国内旅行における旅行費用は日帰りで1人約1万9000円、宿泊の場合は1人約6万8000円となっています。年金から所得税や住民税、社会保険料などが引かれることも考慮すると、夫婦の年金が28万円以上あったとしても、年金だけでやりくりするにはゆとりがあるとは言いにくいでしょう。 ■老後資金には年金のほか、これまでの貯蓄や退職金を加えるのが一般的 年金受給額が多い人は、現役時代の収入が多いため、退職金や預貯金などの資産も多い可能性が高いでしょう。老後、夫婦2人で毎月旅行ができる世帯は、退職金や預貯金などの資産からまかなっているのかもしれませんね。
まとめ
夫婦2人の年金額が多い家庭であっても、年金だけで毎月旅行に行くのはなかなか難しいようです。ただ、定年を迎える前や、年金の受給開始前であれば、将来受け取る年金額を満額に近づけたり、増やしたりすることは可能です。現役世代の人は、ここで紹介した方法や、年金以外の貯蓄を増やすなどして、少しでもゆとりある老後を送れるように準備できるといいですね。 出典 日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額 厚生労働省 令和5年賃金構造基本統計調査 官公庁 旅行・観光消費動向調査 2024年4-6月期(速報) 執筆者:FINANCIAL FIELD編集部 ファイナンシャルプランナー
ファイナンシャルフィールド編集部