世界各国で活躍する日本のビジネスパーソン 〈4〉 ■カナダ編■ アイデンティティーの交錯 「カナダ人であり日本人であるということ」 TORJA Japanese Magazine (CANADA)
―科学者たちのためにサイエンス・イラストレーションを提供されているのですよね?
サイエンス・コミュニケーションツール、サイエンス・ビジュアリゼーションツールとも言えますが、私たちのチームがいわゆるアルファベットのようなものを作り、科学者たちがそれらを自由に組み合わせてビジュアルを作成できるようにしています。 実はそのアルファベットというのも、私がジャパニーズ・カナディアン(日系カナダ人)ということもあって日本語から大きなインスピレーションを受けています。日本語は視覚的かつ絵画的な言語ですよね。例えば「川」「森」「串」など視覚的にとても興味深いです。私は科学やバイオロジーも同じように、スタンダードでシンプルな誰もが理解できる〝言語〞を持つべきだと思うんです。 顧客の中には日本の武田薬品やエーザイもいますが、英語や日本語という言語ではなくて、バイオロジーの共通言語として私たちの商品(アルファベット)を使っていただいています。
―日本とカナダのバックグラウンドを持つ中で、ご自身のアイデンティティーをどう考えていますか?
日本は私の大事な一部 もしアイデンティティーについて聞かれたら、「ジャパニーズ・カナディアン」と答えるようにしています。私が育ったオークビルは、当時はそこまで多様性がある地域ではありませんでしたが、今となっては自分の持つ日本のルーツにとても誇りを持っています。 食べ物や言葉での繋がりは今でも少なからず持っていますし、私の娘は英語よりも日本語を多く話します。私のパートナーも日本語を学んでいて、日本が私のアイデンティティーの中でとても重要な一部になっているのを感じています。
― 日系カナダ人として大変だったこともありましたか?
小さい頃はありましたね。子どもというのは時に残酷なので、私が純粋なカナダ人ではないという理由から少し差別を受けたこともありました。今でこそ寿司や日本食レストランをいろいろなところで見かける時代になりましたが、私が子どもの頃のトロント近郊エリアではそんなことはありませんでした。お弁当にお寿司を持っていったことがあるのですが、周りの人にはそれが変だと感じていたようです。そういった経験から、少なからず心に傷を負っていたと思います。 科学の世界に変化をもたらしたい