【ウインターカップ2023】準優勝の岐阜女子を率いた安江満夫コーチ「努力を積み重ねる天才が育ってくれたのはうれしい」
エース絈野夏海「基礎基本を誰よりも意識してきた」
今年のウインターカップで岐阜女子は、2019年以来の決勝進出を果たすも、京都精華学園に59-63と一歩及ばずに準優勝に終わった。それでも大会歴代トップとなる27本の3ポイントシュートを沈めたエースの絈野夏海、186cmと高さのある留学生プレーヤーのジュフ・ハディジャトゥを擁しながらも、今年も粘り強いディフェンスを前面に押し出す『岐阜女子のバスケ』は存分に発揮できた。 長年のライバルである桜花学園と対戦した準々決勝、第4クォーターを絈野25得点の働きで31-15としてひっくり返した大逆転劇は、大会のハイライトとして人々の記憶に残るだろう。決勝でも京都精華学園の豪華タレントのバスケに押されながら、第3クォーターには23-13と反撃に転じ、絈野の爆発力が飛び出せばどうなるか分からない、というスリリングな試合を見せた。 ただ、岐阜女子の強さはあくまでディフェンスの安定感にあり、それは安江満夫コーチが長年かけて築き上げたスタイルだ。安江コーチは岐阜女子に入ってきた選手に、基本のステップワークから粘り強く教え込む。特に留学生には、慣れない環境で暮らすストレスを感じながらのバスケであることを気にかけながら、時間をかけて少しずつ成長させる。 そして岐阜女子のもう一つ特徴である、最後まであきらめずに戦い続けるメンタリティは、「コートの中だけではなく、コートの外で指導しているつもりです」と安江コーチが説明するもの。「常日頃の学校生活への取り組み方、またウチの選手たちは寮生活ですので、生活の中でいろんな人に感謝する。当たり前のことですが、そういう思いを日頃から作っていくことが、こういうゲームに繋がっていくと思います。こういう時代であればこそ、生徒たちに根付かせていきたい」 高校バスケの名門ではあるが、京都精華学園や大阪薫英女学院のように中学から選手を育てるシステムがあるわけではなく、全国から選手を集めるにしても「やっぱり桜花学園に行きます」と断られるケースは今まで何度もあったそうだ。天賦の才やサイズのある選手が集まればチーム作りは楽だろうが、安江コーチはライバルとの比較をせず、「岐阜女子でやりたい」という選手を3年間かけて粘り強く育て上げる。岐阜女子が粘り強く戦うチームになる理由がここにある。 1年生から試合に出て、2年生からエースを務めてきた絈野はこう語る。「安江先生の大切にしている基礎基本を誰よりも意識して練習してきたつもりです。それがしっかり身に着いたので、この3年間で伸びてこれたんじゃないかと思います」 ファイナルまでチームを引っ張ってきた絈野について、安江コーチは「入学してきた時は長野県の名もない中学の出身で、170cmそこそこで少しバスケットができるぐらい。シュート感が良いとは思いましたが、特筆すべき子ではありませんでした」と語る。「それでも指導していく中で非常に吸収力の高い子でした。野球のイチローさんが前に言っていた『努力を積み重ねる天才』、そういう子が育ってくれたのは指導者としてうれしく思います」