自ら“失敗”を学習できる「人型ロボット」を開発! アメリカの新興企業「フィギュアAI」とは? 専門家が解説
◆自ら学習する人型ロボット
吉田:この「フィギュアAI」という会社、どんなロボットを開発しているのですか? 塚越:「フィギュアAI」は今年1月に、人型ロボットが動く様子をYouTubeで公開しました。 人間がロボットに「コーヒーを1杯つくって」と頼むと、ロボットがコーヒーマシンに(豆の入った)カプセルを入れて、ボタンを押してコーヒーをつくる過程を撮影した動画です。一見、大したことをしているようには思えないのですが、実はすごいことです。 ユージ:どこが、すごいのでしょうか? 塚越:一言で言えば「ロボットが学習する」ということです。今回は、コーヒーマシンでコーヒーを入れるために、10時間の動画を見せて学習させています。ただ、公開された動画の前の段階では、カプセルがうまくセットできないなど、何度も作業を間違えています。 そうした失敗の経験を元にロボットが作業を修正して、コーヒーを作れるようになっているのです。つまり、人間と同じように「学習」しているのです。失敗から学習し、ロボットが人間の指示なく自らミスを改善できます。現状では、あらゆることができる「汎用AI」ではなく、限定的な範囲の学習ですが、身体的な動きを学習できるのは、実はとてもすごいことです。 吉田:指示なく学習して改善するというのがすごいですね。
◆高齢化が進む日本では「介護ロボット」に期待
ユージ:「人型ロボット」については、どんな可能性があると思いますか? 塚越:人型ロボットというと、日本では2000年に「Honda(ホンダ)」が二足歩行ロボット「ASIMO(アシモ)」を発表しました。ロボットが二足でバランスをとって動くのは非常に難しいのですが、実は先ほど話した人型ロボットなども含め、最近ではロボットが走ったり、物を持ち上げたりと、かなり高度な作業や動きができるようになってきています。 フィギュアAIは公式Webサイトで、「アメリカでは倉庫業務や運輸業などの雇用不足が生じており、それらをロボットで穴埋めしたい」と述べています。人間の雇用が失われるという懸念もありますが、現実的に働き手が不足しているので、やはり(労働市場へのロボット投入は)重要だろうと言われています。 少し先になると思いますが、個人的には「介護ロボット」が重要だと思います。生成AIが搭載され、その人に合わせて会話しながらお風呂の介助をしたり、ベッドに運んだりできるようになるとすごいなと思います。 こういった分野は、近年では「ジェロンテクノロジー」と言われています。「老年学」を意味する「ジェロントロジー(Gerontology)」と、「テクノロジー(Technology)」をかけ合わせた造語「ジェロンテクノロジー」は、要するに高齢者を支えるためのテクノロジーです。 日本では、世界的にみても超高齢化社会で、他の国よりも(高齢化が)早く進んでいます。これが問題だと言われていますが、逆に言うと、高齢者の介護やいわゆるジェロンテクノロジー分野が、日本市場でもっと積極的に拡大するであろうということでもあります。技術開発のしどころがあるということです。 日本では、ドラえもんや鉄腕アトムなど、ロボットと人間が仲良くなるフィクション作品が好まれていますし、ロボットが好きだと思います。技術的にはまだまだ難しいところがたくさんありますが、ジェロンテクノロジーを考えてみると日本企業はまだまだ参入できると思うので、期待したいと思います。 (TOKYO FM「ONE MORNING」2024年3月6日(水)放送より)