【連載】会社員が自転車で南極点へ3 ユニオングレーシャー基地での生活
イリューシンで南極大陸に上陸
朝が早かったからだろうか、大きく揺れるイリューシンの中で、僕は深い眠りについていた。ドドン、という違和感のある衝撃で、目を覚ませば、周囲が急にざわつき始めた。南極大陸に着陸したのだ。
南極大陸唯一の民間基地ユニオングレーシャー
機体前方にある金庫のような重い鉄のドアが開かれると、目もくらむような光が差し込んできた。まぶしい。ドアの向こうには、白く輝く大地が広がっていた。ユニオングレーシャーは、南緯79度西経82度にある南極大陸唯一の民間基地。標高は700メートルと南極大陸にしては低いので、夏の気温は氷点下10度前後に留まる。ANIという会社が運営しており、生活に必要なあらゆる設備が揃っている。 食堂やトイレ、生活用のテント、医務室。意外なものでは、シャワールーム。(ここは、南極大陸にして、熱々のお湯を堪能できる。)更に、ヨガスタジオに、お土産屋さん、電話ボックスまである。飛行機が降りたったのは、このユニオングレーシャーから10km程度、離れた場所にある氷の滑走路。そこから基地までは、自動車で移動する。雪の上を走ることができるようにタイヤは太く、車高は高い。日本では、なかなかお目にかかれない自動車だ。
食料は1日3000~4000キロカロリー
僕が到着したのは、2015年12月29日。それから1週間、ここで南極点に出発するための、様々な準備を行った。まずは、食料と燃料、そして住居の確保だ。基地の倉庫を、ガイドのエリックと共に物色する。倉庫には、登山道具から日用品まで、なんでも揃っていた。
なんと、日本のカップラーメン「サッポロ一番」もあった。勿論、無条件でこれを選択だ。フリーズドライも、ラザニア、リゾット、パスタ等、豊富なメニューが揃っていた。これは、豪華な旅行になりそうだ!期待が高まる。 食料の目星をつけたら、ひとつひとつのカロリーを調べて、記録していく。そのカロリーがどの要素から得られるのか(糖分や脂肪、たんぱく質等)も併せて調べる。食べ物を摂取してから、エネルギーに転換されるまでのスピードが違ってくるからだ。これらの要素を総合して、朝・昼・夕の献立を立てていく。1日に、大体3000~4000キロカロリーになるように調整するのだ。