月面探査は「日本の勝ち筋」、政府が重点支援を-小林前経済安保相
(ブルームバーグ): 自民党で宇宙政策に関わっている小林鷹之前経済安全保障政策担当相は、日本には月面探査の分野で優位性があり、政府が重点的に支援すべきだとの考えだ。
小林氏は11日のインタビューで、政府が今月中にまとめる宇宙技術戦略では「日本の勝ち筋」を見極め、限られた分野に資源を配分することに意義があると指摘。民間主導で月面産業ビジョン協議会が立ち上がり、月面着陸の技術開発が進むなど世界と競争する上で「強みがある」として「国として強く推していくべき」と述べた。同氏は、自民党宇宙・海洋開発特別委員会の事務局長。
政府の宇宙技術戦略は、必要な宇宙活動を自前で行う能力を持つ狙いで開発の工程表を示す。合わせて宇宙航空研究開発機構(JAXA)に10年間の「宇宙戦略基金」を設け、総額1兆円規模で民間企業や大学に補助金を交付するなどして先端技術開発や商業化を支援する。4月以降にJAXAが公募を開始する。政府は2030年代の早期に宇宙産業の国内市場規模を20年比倍増の8兆円に増やす方針だ。
米モルガン・スタンレー証券は、世界の宇宙関連産業の市場は40年までに約1兆ドル(約148兆円)に増加すると予測しており、宇宙技術を巡る国際競争は激化している。日本国内では21年に議員立法で成立した宇宙資源法が宇宙空間で取得した資源に所有権を認めており、ビジネスの予見可能性が高まった。宇宙スタートアップが増えているほか、大手による新興企業への出資も拡大している
JAXAは1月、無人探査機「SLIM」を月面の目標地点からわずか100メートル以内の誤差でのピンポイント着陸を成功させ、同時に世界初の完全自律ロボットによる月面探査と撮影データの送信にも成功した。また、宇宙ベンチャーのispace(アイスペース)は早ければ24年冬にも月面着陸に再挑戦する。同社は、昨年4月に民間では初めて挑戦したが失敗していた。
小林氏は、一方で「強みを持たない技術」についても一定の強化が必要との見解を示した。宇宙空間へのアクセスを確保するため、「自国の衛星は自国で打ち上げる国に最低限しなければならない」と述べた。通信や気象観測を含めた人工衛星の数は急増しており、23年は世界で約2900機が打ち上げられた。