大河ドラマではスルーされた道長をめぐる三角関係の可能性…紫式部が「和泉式部はけしからん」と書いたワケ
■和泉式部は赤染衛門や清少納言と交流したが、紫式部とは… 『新古今和歌集』1820番には、赤染衛門が和泉式部と親しく交わした贈答歌も載る。これはなかなか面白くて、和泉式部のもとに元夫の橘(たちばな)道貞(みちさだ)が通ってこなくなって、ほどなく敦道親王を通わせるようになったと聞いた赤染衛門が、それはあんまりだと思って送った歌。 別れた男をめぐって歌のやり取りをしているとは赤染衛門と和泉式部は遠慮なくものを言いあえる間柄で、相当に仲が良かったのだろう。 それとも和泉式部がわりと誰にでも親しげに接する人だったのだろうか。和泉式部は清少納言ともやりとりをしているのである。 そのとき、和泉式部はまだまだ若いとおだてて、時流から流れ去ろうとしている清少納言を引きとめているようにみえる。『紫式部日記』で「されど、和泉はけしからぬかたこそあれ」と言っていた、そのけしからんところというのは、もしかして和泉式部が清少納言を彰子サロンへ引き込もうとしていたことをさしていたのだろうか。いずれにしろ、清少納言は、赤染衛門とも和泉式部とも和歌のやりとりをしていたのであって彰子サロンにいてもおかしくない人だった。 ---------- 木村 朗子(きむら・さえこ) 日本文学研究者 津田塾大学学芸学部多文化・国際協力学科教授。東京大学大学院総合研究科言語情報科学専攻博士課程修了。著書に『女子大で『源氏物語』を読む 古典を自由に読む方法』(青土社)、『女たちの平安宮廷 『栄花物語』によむ権力と性』(講談社選書メチエ)など。 ----------
日本文学研究者 木村 朗子