「青木崇高のビンタを仮想体験」 ゴジラのMX4Dがすごすぎて 椅子の上でタコ踊りしてしまった件
●叩かれるシーンまで衝撃が再現される4Dにビックリ
海のシーンはスピルバーグも褒め称えたというくらい、VFXとは思えないほどリアル。 昔「タイタニック」を前の席で見て船酔いしたことを思い出した。良かった。後ろの席で本当に良かった。 風ブォッ、椅子ガクガク、スクリーンギャオース! ざっぷんどっぷん! 文章が擬音だらけになってしまったが、それほど感覚が忙しい。しかも衝撃の再現は飛行機や船、ゴジラによるものだけにあらず。神木隆之介演じる敷島が、青木崇高演じる橘宗作に叩かれるシーンまでパシッと風で衝撃が来てビックリ。そこまでする!? まさか私の人生、青木崇高さんに叩かれる疑似感覚が味わえる日が来るとは。 そして、ゴジラの大暴れとともに描かれる、戦争を「生き延びてしまった」という後悔、今度は役に立ちたいという願い。ほぼ笑わずそれを表現する神木隆之介を筆頭に、浜辺美波、安藤サクラ、佐々木蔵之介、吉岡秀隆、山田裕貴がガツンガツンと名演技で、ゴジラという虚構の上にリアルな「戦後」を浮かび上がらせるすごさ。吉岡秀隆演じる野田健治による、作戦決行前の演説は深くしみいる。 ゴジラに立ち向かう人たちの知恵と苦悩、勇気と奮闘に泣いた。ゴジラで泣くとは全然想像していなかった。 ゴジラとはなんなのだろう。人間の悪意、戦争、沈めても沈めても息を吹き返してくる殺意の具現化なのか――。
●「ゴジラ」のテーマ曲の迫力
終わった時はもうグッタリ。こ、これはすごい。ゴジラの恐ろしさを肌で感じてしまった。私の隣には、昔からのゴジラのファンの方なのか、60代後半から70代くらいのご夫婦が座っていらっしゃったが、終わったあと、支え合いながら、よたよたと階段を下りていかれた。 私もすぐには立てず、エンドロールで流れる「ダダダ、ダダダ、ダダダダダダダ!」というゴジラのテーマに身を任せる。劇中でもガンガン流れていたが、低音でお腹に響くこの「迫りくる感」よ! この映画の迫力は、このメロディーがあってこそ。作曲家は伊福部昭さんという方なのか。ウィキペディアを見てみると、初期のゴジラシリーズでは怪獣の鳴き声や足音までも担当し、なかなか決まらないゴジラの鳴き声に、コントラバスの音を提案したというからすごい! これは猛烈に聞きたい。まずは1954年上映の第1作「ゴジラ」を見よう。 ゴジラ生誕70周年での、あまりにも遅い初ゴジラ体験だったが、本当に見て良かった。 思わぬMX4D参戦により、気分的に落ち着いて見ることができない部分もあったが、それすらもリアル。いつ襲ってくるかわからない脅威と対峙する切迫感を知った。 まだあの地鳴りのするような音楽が聴こえてくる。 ダダダ、ダダダ、ダダダダダダダ…… 3月8日には日本アカデミー賞(作品賞をはじめ12の優秀賞受賞)、3月11日にはアカデミー賞(視覚効果賞ノミネート)授賞式。ぜひ選ばれてほしい。 映画『ゴジラ-1.0』 全国東宝系にて公開中 監督・脚本・VFX:山崎 貴 出演:神木隆之介 浜辺美波 山田裕貴 青木崇高 吉岡秀隆 安藤サクラ 佐々木蔵之介 ©2023 TOHO CO., LTD. 田中 稲(たなか いね) 大阪の編集プロダクション・オフィステイクオーに所属し『刑事ドラマ・ミステリーがよくわかる警察入門』(実業之日本社)など多数に執筆参加。個人では昭和歌謡・ドラマ、都市伝説、世代研究、紅白歌合戦を中心に執筆する日々。著書に『昭和歌謡出る単1008語』(誠文堂新光社)など。 ●オフィステイクオー http://www.take-o.net/
田中 稲