アメリカ宇宙軍司令官、中国の「衛星軌道上の軍拡」を懸念…ロシアよりも大きな問題になっている(海外)
米軍の宇宙作戦を統括するチャンス・サルツマン大将は、地球の衛星軌道上での中国の脅威について警告した。 彼は、ロシアが軌道上に配備する可能性のある核兵器よりも、中国の軍事宇宙技術の進展の方が大きな課題を提起していると述べた。 アメリカはスペースXなどの民間企業に宇宙防衛能力を大きく依存している。 中国は「驚異的」な速さで軍事用宇宙装備を開発しているという。 アメリカ宇宙軍のチャンス・サルツマン(Chance Saltzman)大将は「(中国が)開発している宇宙兵器の種類の多さと、その開発スピードは極めて脅威的だ」と、フィナンシャル・タイムズに語っている。 また、ポリティコのインタビューでは、ロシアが軌道上に配備する可能性のある核兵器よりも、中国の軍事宇宙技術の進展の方が大きな問題を提起していると述べた。 彼はまた、中国が地球上での軍事ミッションで使用される可能性のある数百の軍事衛星のネットワークを開発していることを懸念していると述べた。 宇宙開発における中国の脅威に関して、米軍幹部はここ数カ月にわたって警告を発しており、今回のサルツマン大将のコメントもそれに続くものとなっている。
宇宙戦のリスクは増大中
宇宙における支配権の獲得は、中国の習近平国家主席が強く意識してきた重要な課題だ。習主席は中国を「あらゆる面での宇宙大国」にするという意欲を繰り返し表明している。 実際のところ、中国は急速にアメリカに追いついているようだ。長年アメリカが支配的な地位にあった宇宙で、中国は近年、洗練された軍事計画を展開している。 4月には、アメリカ航空宇宙局(NASA)のビル・ネルソン(Bill Nelson )長官が、中国は宇宙で行っている軍事活動を民間プロジェクトだと偽っていると警告した。 中国は、宇宙空間に軍事拠点を置く意図はないと繰り返し否定しており、中国の国連大使は2021年、「宇宙戦争は勝利できるものではなく、決して戦ってはならない」と述べた。 しかし中国は、極超音速滑空体や、防空システム及び早期警戒衛星を回避できる兵器を開発していると考えられている。また、アメリカの衛星を標的にする技術も開発している。
「歴史の中で極めて重要な瞬間」
アメリカのスパイ衛星の艦隊を構築・運営する国家偵察局のトロイ・マインク(Troy Meink)副局長は、「我々は歴史の中で極めて重要な瞬間にいる」と、4月にコロラド州で開催された会議で述べたと、Space.comが伝えている。 「この数十年で初めて、宇宙と宇宙技術におけるアメリカのリーダーシップが脅かされている。我々の競争相手は、我々の能力を脅かす方法を積極的に模索しており、我々はそれを日々実感している」 カナダアジア太平洋財団によると、中国の宇宙開発への支出は2022年の21億5000万ドル(約3300億円)から2023年には140億ドル(約2兆1300億円)に増加した。
Hannah Abraham