チャールズ国王、「大量虐殺を行った」と激しい怒声を浴びる。「私たちの土地を返せ」と発言したオーストラリア上院議員は制止される事態に
チャールズ国王がイギリス君主として初めてオーストラリアを訪れたことは、かつての宗主国であるイギリスの君主を今後も自国の元首とし続けるのか、または共和制への意向を目指すのかについて、オーストラリアの人々の意見がいまも大きくわかれていることを浮き彫りにしたといえる。 【動画】罵声を浴びるチャールズ国王 首都キャンベラにある国会議事堂を訪れ、スピーチを行った75 歳のチャールズ国王に対し、先住民のアボリジニとして初めて上院議員となったヴィクトリア州選出のリディア・ソープ議員が、「彼は私の国王ではありません」と大きな声で発言。「大量虐殺を行った」などとして厳しく批判した。 インターネット上に投稿されている動画には、国王に罵声を浴びせ、次のように訴えるソープ議員が映っている。 「あなたは私の国王ではない、君主でもない……私たちの民族を大量虐殺した。私たちの土地を返して」 「私たちから盗んだものを返して。私たちの骨、頭蓋骨、赤ちゃんたち、そこに住む人々。あなたは私たちの土地を破壊してしまった」 先住民のアボリジニの人々は長年、オーストラリア政府との和平協定の締結を求めてきた。ソープ議員はそのことにも触れ、「ここはあなた方の土地ではない」として、改めて自国政府と先住民の間での平和的な「協定書の作成」を要求した。
ソープ議員はその場にいたほかの人たちに制止され、一旦その場から席を外すように促された。そしてその一部始終が撮影されている間、チャールズ国王は、ほのかに呆れたような笑顔を浮かべながら議員の主張を気にも留めない様子で、オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相と話しを続けていたことにも注目が集まった。 バッキンガム宮殿はこの一件について、コメントを控えている。だが、王室関係者は、国王夫妻がその他の場所では「温かい歓迎を受けていた」ことを繰り替えし強調。次のように述べている。 「大勢の人々が足を運び、支持する気持ちを示してくれたことに、両陛下は深く感謝されています。そして、すべての人たちと個別に会話ができないことを、とても残念に思われています」 チャールズ国王とカミラ王妃は4日間の滞在中、訪れた各地で興奮気味の群衆に迎えられた。だがもちろん、同時に抗議の声にも出迎えられている。それも、この日の国会議事堂が初めてではなかった。 イギリス国内で行われている共和制への移行を訴える活動は、オーストラリアにも飛び火している。国王夫妻が訪問した国会議事堂の前では、小規模な抗議活動が行われ、オーストラリアの活動家たちも参加していた。 オーストラリアの世論調査の結果は長年、この問題に対する国見の意見が一貫して割れていることを示している。だが、1999年に実施され、エリザベス女王を君主とし続けることを決定した国民投票の後、共和制への移行の是非を問うための新たな国民投票の計画はない。 チャールズ国王は10月23日、南太平洋のサモアを訪れ、イギリス連邦首脳会議(CHOGM)に出席する予定。植民地時代のイギリスの政策について、より強いプレッシャーを受けることになると予想されている。 イギリス政府は『BBC』に対し、大西洋奴隷貿易におけるイギリスの役割について、政府がこの会議の中で「謝罪する予定はない」と明らかしている。
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