『レナティス』開発者インタビュー。“抑圧と解放”、“同調圧力への反旗”。日本に根付く価値観へのアンチテーゼを込めた、新作アクションRPG誕生の秘密をキーパーソンに訊いた!
取材:パンケーキるぅ★深山 フリューはNintendo Switch/PS5/PS4/PC向けの完全新作アクションRPG『REYNATIS/レナティス』(以下、『レナティス』)を発表。2024年7月25日に発売が予定されている本作は、魔法が存在する2024年の東京・渋谷を舞台に、自由を目指す魔法使いの青年・霧積真凛と、秩序ある世界を目指す魔法取締官・西島佐理が相対する一作だ。 プロデュース・ディレクションをフリューの礒部たくみ氏が担い、シナリオライターの野島一成氏や、コンポーザーの下村陽子氏など、豪華クリエイターが制作に参加。現実とファンタジーが入り混じる奥深い物語と壮大な世界観が紡がれる。 今回は、本作の世界観、シナリオ、音楽を構築した礒部氏、野島氏、下村氏にインタビューを実施。作品の誕生経緯やコンセプト、シナリオの見どころ、楽曲制作の裏側といった、ここでしか聞くことができない開発秘話を語っていただいた。 ※本インタビューは2023年に竣工した東京・Shibuya Sakura Stage協力のもと行われた。ゲーム中にも実際の建物外観が登場する最新の施設となっている。 明確なコンセプトと設定に礒部氏の熱意が加わり、野島氏と下村氏を口説き落とした ――初めに『レナティス』のコンセプトとテーマを教えてください。 礒部 『レナティス』のコンセプトは“抑圧と解放”です。抑圧されているときの緊張感やストレスを解放したときの気持ちよさをゲームのシナリオ、世界観、音楽、すべてにおいて味わっていただけるような作りにしています。 そして、テーマは“同調圧力に生きづらさを感じる人々”です。たとえば、日本に根付いている出る杭は打たれる文化や、平等がいちばんみたいな考えがあると思います。私自身も特徴ある髪色や服装をしていることもあり、奇異の目で見られることが多くあります。皆さんも、考えかたや好みが人とは違うというだけで、そのような経験をしたことはないでしょうか? だから個性を強く出せない。 そのような日本の文化、考えかたへのアンチテーゼになっていて、「もっとみんな個性を出してほしい!」という想いを込め、“個性を出したくても出せない人”に寄り添うタイトルになっています。 ――なるほど。『レナティス』というタイトルにはどういった意味が込められているのでしょうか? 礒部 ベースになっている単語がふたつあります。まずはラテン語で“レナトゥス”。生まれる、再生するという意味を持っています。もうひとつはスペイン語で、王様、生まれるという意味を含み、 “生まれ持っての王様”という意味を指します。 物語を遊んでいただくと、“生まれる”、“再生する”などの意味がわかると思います。これらを合わせて“レナティス”というタイトルを作りました。そして、この単語自体も重要な意味を持つものとして劇中で登場してきます。 ――本作の制作には名だたるクリエイターの方々が参加されています。野島さんや下村さんにお仕事を依頼することになった経緯を教えてください。 礒部 ダークな世界観や、闇に生きている少年少女という要素を最大限に構築してくれるクリエイターさんを考えたときに、真っ先に浮かんだのが野島さんでした。さらにそれに合う重厚で神々しい音楽と言えば……と考えたら下村さんだなと思い、お声掛けさせていただきました。 ――おふたりが真っ先に浮かんできたのはなぜでしょう? 礒部 ダークファンタジーやアクションRPGが好きで、『キングダム ハーツ』シリーズなどを小さいころからよく遊んでいました。幼少期から遊んできたゲームなので、自分の価値観や感性に影響を与えていて、そこが今回のキャスティングにつながったひとつの理由です。 ――だから『キングダム ハーツ』の制作に携わったおふたりにお声掛けしたと。野島さんはお仕事の依頼を受けた際にどういった印象を抱きましたか? 野島 最初の企画説明の段階から、わかりやすいコンセプト・テーマを持ってきてくれる方ってあまりいないのです。だから、礒部さんから“抑圧と解放”というコンセプトが明確に提示されたときは新鮮さを感じました。ちょうど時間も空いていたので……。 下村 空けたんでしょ~(笑)。 野島 はい、やりたくてスケジュールを空けました(笑)。初めての方とはなるべくいっしょに仕事をしてみたいという思いもあり、『レナティス』の仕事を引き受けさせていただきました。 ――対して下村さんはどうでしょう? 下村 礒部さんからお仕事の依頼を受けた際「ぜひ下村さんに担当していただきたいんです!」と、すごく情熱を持って口説かれたのが印象的でした。「そこまで熱く言ってくださるなら!」と、引き受けることにしました。 ――礒部さんとのやり取りの中で印象に残っている言葉などは? 下村 そうですね……。印象に残っているのは「野島さんと連絡つきました!」と報告いただいたことですかね(笑)。「シナリオは絶対野島さんにお願いしたいです」とおっしゃっていたので。しかし、野島さんはお忙しい方ということもあって連絡先を公開されてないですよね? 野島 そうですね。 下村 お仕事の依頼をする以前に連絡が取れるかどうかという問題があり、私経由でSNSを使って野島さんにアプローチしました。 ――そんな裏話が!? 下村 人づてに言うのも躊躇する部分があると思うのですが、それでも何とか連絡を取りたいという熱意が礒部さんから伝わってきて。だから礒部さんから「野島さんと連絡が取れました!」と聞いたときはうれしかったです。 野島 そんな話を聞くとニヤニヤしちゃいますね(笑)。 礒部 おふたりに参加してもらえなかったら、この企画を続行させるつもりはなかったです。「どちらかが欠けても企画は没にする」と上司に言いました(笑)。 下村 野島さんからのオーケーが出るまでは話が進まなかったですよね。野島さんの参加が決まってから一気に音楽を作る作業が進んでいきました。私もゲームは物語ありきだと思っている部分があるので、シナリオが決まってから音楽を発注したいという、礒部さんの作品に対する考えかたも印象深かったです。 “最強の厨二病”と切羽詰まった環境下で生まれた楽曲が作品を彩る ――『レナティス』を開発するうえで影響を受けた作品はありますか? 礒部 やはり『キングダム ハーツ』シリーズや『ファイナルファンタジー』シリーズですね。自分の価値観に影響を与えているのが大きいです。 ――本作と世界観が似ていたり? 礒部 そういうわけではなく、独特の雰囲気と言いますか。暗い世界の中で活躍したり、希望を持ったりするキャラクターたちがいろいろと絡み合って重厚な物語になっていく、という雰囲気が影響を受けています。 ――礒部さんは野島さんにどういったオーダーを出したのでしょうか? 礒部 軸になるコンセプト、絶対に入れたい設定、描きたいシーンを最優先でシナリオに盛り込んでほしいとお願いしました。 ――野島さんとのやり取りで印象に残っていることはありますか? 礒部 印象に残っているのは“厨二病”の言語化です。企画や設定の中で厨二病という言葉をよく使っていたのですが、厨二病の価値観は人それぞれ異なるので、野島さんとふたりで“僕が思う最強の厨二病とは”を共通認識にするためのすり合わせ作業をしました。 ――厨二病の価値観の共有ですか。おもしろいです! 礒部 まずは“僕が思う最強の厨二病”を言語化し、それを感じ取れるアニメや映画などを共有して、厨二病の方向性に齟齬がないよう価値観を近づけました。 ――そして野島さんは礒部さんの厨二病を咀嚼してシナリオに反映していったと。 野島 そうですね。でも咀嚼するのにまあまあ時間が掛かりました。僕の世代での厨二病はカッコイイ者ではなく、イジられる者という印象でした。そのイメージを礒部さんに伝えたら「イジっていいです」と言われたので、カッコよさの中にダサさみたいなものを若干盛り込みました。 ――やはり厨二病のキャラクターがいるということなのでしょうか? 礒部 はい。そのひとりが主人公である霧積真凛です。彼には “本気を出したら強いけど力を出せない、もしくは出さないことをカッコイイと感じている”という、僕が思う最強の厨二病の要素を入れてもらいました。 ――真凛のキャラクター性には要注目ですね! 野島さんは礒部さんからのオーダーを受け、どのようにシナリオを書いていったのでしょう? 野島 当初は物語の舞台が決まっておらず、現実にある街のどこかで主人公たちが魔法を使って戦いながら奔走する、そして別の異世界もあるという漠然とした状態でした。なので、まず“なぜ彼らは奔走するのか”。その目的を考えることから始めました。 ――目的からですか。 野島 厨二病的な雰囲気はそれはそれでよしとして、物語の中に登場するキャラクターたちは何を考えて、何を目的に行動するのか、そこが重要だと感じたので最初に考えました。 ――シナリオは自由に書けたのでしょうか? 野島 入れなくてはならない要素もありましたが、結構自由に書かせていただきました。プロットを書いてはフィードバックをもらうという手順をくり返し、そのうちにだんだん物量感がわかってきて、形になっていったという感じです。 ――野島さんの好みのシナリオが書けたのですね。 野島 そうですね。ダークな世界観でキャラクターたちが辛い思いをしながらも、皆で軽口叩き合うみたいな雰囲気が作れました。でも主人公の真凛はそれにうまくなじめていないのですよ(笑)。 本当はなじんでもいいかなと思いつつ、ちょっとまだ早いかなといった計算がいろいろと働いていて、そこを仲間にイジられるみたいな描写があって、僕の好きなタイプの話にできたと思います。 ――物語を読み進めたくなります。下村さんにはどういったオーダーを出したのでしょうか? 礒部 野島さんから上がってきたシナリオをベースに、登場するエリアやシーンなどをリストにまとめ、そこに曲のイメージとなるキーワード、感情や情景を記載しました。あと、この曲は絶対オーケストラにしてほしいといった要望も添えて下村さんにお渡ししました。 下村 礒部さんからは「これとこれは絶対にオーケストラで!」という明確なオーダーをいただきました。音楽、とくにオーケストラはすごくお金がかかるので、オーダーを見ながら、予算に合わせて各楽曲の内容を組み立てたのが最初の仕事です。 ――オーケストラへの強いこだわりがあったと。オーケストラ以外の楽曲はどうでしょう? 下村 イメージは共有いただきましたが、絶対にこうしてほしいという要望はそこまでなかったです。ただ中には受け取りかた次第で印象が変わるイメージも記載されていて、ちょっと難しいオーダーもありました。 礒部 先述した通り、表現したい感情や情景、キーワードをお伝えしていたので、それらを下村さんの音に変換して自由に制作してもらいました。 下村 自由に作れるは作れるのですが、もうプレッシャーですよ(笑)。私は自信のないタイプの人間なので、「いい曲じゃなかったらどうしよう」と、いつもビクビクしながら楽曲を上げていました。 でも、礒部さんは打てば返すという感じですぐに感想を教えてくれるので、こちらもテンションが上がりました。礒部さんとのキャッチボールのようなやり取りは、楽曲を作るモチベーションになっていたと思います。 ――楽曲制作の中で印象に残っているエピソードを教えてください。 下村 じつは先月(2024年1月)に収録があって、3曲は絶対レコーディングしないといけなかったのですが、直前になって私の中で「弦を録りたい」、「ピアノを録りたい」といった欲が出てきて、けっこうギリギリまで作業することがありました。 スケジュールに追われながら、夜中に礒部さんに調整した楽曲を聴いてもらって、なんとか納得のいく楽曲を作れました。そういった切羽詰まった環境下や精神状態じゃないと生まれない曲ができあがったのが印象的です。 ――背水の陣のようなものでしょうか? 下村 背水の陣というより、絶対に負けられない戦いの地獄の苦しみというか(笑)。追い詰められたからこそできた、ただ調子がいいだけでは生まれない楽曲が本作にはあるので、それがどの曲か皆さんにはぜひそこも意識して聴いてもらいたいです。 じつは顔を合わせることが少なかった野島氏と下村氏 ――野島さんと下村さんはお仕事をいっしょにされることが多いと思います。互いの印象を教えてください。 野島 下村さんはパワフルな方ですよね。でも、あまり会うことはなくて。 下村 とくにスクウェアの社員じゃなくなってからはもっと会わなくなりました。 ――同じ会社で同作品を制作していても会わないものなのですね。 野島 仲が悪いとかではなく、同じ作品でもまったく別の軸で作業が進んでいるので、作品を通して互いを知るという感じです。 ――下村さんから見た野島さんの印象はどうでしょう? 下村 若かったときは野島さんが怖かったです。何て言うのかな、シナリオを書いている方なので、気難しくて話しかけづらい、尖った孤高の人という印象がありました。あと相当昔の話ですが、とあるタイトルの飲み会で野島さんが怒りながらケンカしていたことがあって……。 野島 うそ~。それ僕じゃないんじゃない? ――クリエイターどうしだからでしょうか? 下村 そうそう、互いに作りたいものがあって、その想いがぶつかってケンカしちゃうというのは、居酒屋ではわりと日常的というか(笑)。野島さんもかなり熱くぶつかっていた記憶があって。 最初は孤高の人という印象が強かったのですが、あんな風に熱く語る場面もあったのが驚きでした。そういったモノづくりに対して真摯な一面も拝見し、すばらしいシナリオを数多く手掛けられているので、昔から尊敬できる存在です。 野島 ぜんぜん記憶にないし、何か恥ずかしいなぁ。 下村 だからいまこうして話せるのがビックリです。仕事関係の飲み会でたまにお会いすると、いつもニコニコされています。 私が野島さんのキャラクターを知らなかっただけなのか、それとも時が流れて野島さんが丸くなったのか、定かではないのですが、いまは孤高の人ではなくやさしい人という印象ですね。 ――そんな過去が。礒部さんの印象はどうでしょう? 野島 派手な見た目をした熱い人といった印象です。初めてお会いしたときは髪の色がピンクで、そんな風貌の人が本作の企画説明をしてきて、「あぁ、この人は本当にその気持ちをそのままゲームにしたいのだな」と感じて、ゲームの全体像が見えた気がしました。 ――「もっと皆個性を出してほしい」という想いを感じたと。下村さんはいかがでしょうか? 下村 ふだんからすごく気を使ってくださっているのですが、ふとしたときに本当の礒部さんが垣間見えることがあって。たとえば、LINEでやり取りしている際、気を使ってくれるような文面のあとに本音を感じさせるメッセージやスタンプが来たりして、そのギャップがおもしろいというか、接していて楽しい人です。 楽曲は下村氏らしさがありつつも、いつもと違った雰囲気が魅力 ――本作の世界観とあらすじを教えてください。 礒部 舞台は魔法が存在する2024年の東京・渋谷。そこでは魔法使いが妬み嫌われ恐れられる存在となっています。とある理由で渋谷を訪れた魔法使い・霧積真凛と、魔法使いを取り締まる組織に所属している魔法取締官・西島佐理、この相反するふたりの主人公が出会ったことで物語が動き出す、というのがおおまかなあらすじです。 ――礒部さんは野島さんから上がってきたシナリオや世界観を読んでどう感じましたか? 礒部 シンプルですがすごくいいなと。 野島 でもやり取りは結構ありましたよね。 礒部 ありました。執筆速度がメチャクチャ早くて「こういう設定を入れたいです」とコメントしたら、翌週にはそれを反映させつつも、内容がまるっと変わったプロットが届いて驚きました。 野島 少し変えるというのが苦手なので、わりとガラリと変えることもありましたね。 ――本作を作るうえで絶対に外せなかった要素はなんでしょう? 礒部 ゲームシステムに関わる部分、真凛が所属する組織の存在、真凛と佐理の敵対関係といったものは、僕の中でイメージが固まっていたので、「絶対に入れてください!」とオーダーしました。軸になるオーダーはありつつも、野島さんらしさを出していただきたかったので、それ以外の部分は比較的自由に執筆していただいたと思います。 ――現代を舞台にしつつもファンタジー色が強い本作ですが、下村さんは世界観やあらすじを初めて聞いた際にどう思いましたか? 下村 現代的な街を舞台にしつつも、ダークファンタジーな雰囲気があるという世界観はおもしろいですよね。ですが、そこに「オーケストラの楽曲がほしい!」と言われたときは、自分の中で本作の世界観とオーケストラが結びつかず、驚いてしまいました。でもこの部分は本作の根幹になる要素だと感じたので、齟齬がないように資料をしっかり読み込みました。 ――資料を読み込んで初めて本作の音楽が見えてきたと。 下村 はい。本作の魔法はファンタジー作品によくある単純な存在ではなく、その中にはさまざまな想いや思惑があり、善悪では片付けられない複雑な要素も絡み合っています。だから資料を読み込んでようやく「アングラで現代っぽいから、単純ないま風の曲にしましょう」というわけではないのだなと理解しました。そういったことを踏まえて、礒部さんが私に求めるオーケストラとはどういったものなのかを考えて作曲しました。 ――曲作りで悩むこともありましたか? 下村 最初に手掛けた真凛のテーマ曲はかなり悩みましたし、たいへんでした。でも途中まで作ったものを礒部さんに聴いてもらったら「すごくいいです!」とおっしゃっていただけたので、それを最後まで作ってようやく1曲目が完成しました。そこからは自分なりに本作の世界観を理解できたと思い、2曲目以降は1曲目ほど悩まずに作れたと思います。 ――たいへんというのはゲームの指針となる曲だからでしょうか? 下村 そうですね。どのタイトルも1曲目はとても大事です。とくに今回のような独特な世界観の作品の場合は、私が世界観を勘違いして曲を作ったらどうしようという不安もあったので、1曲目のオーケーが出たことで気持ちがだいぶ楽になりました。 ――世界観をゲームに落とし込むにあたって、サウンド面で意識したことを教えてください。 下村 じつは本作にはふだんの私が作らないようなジャンルの楽曲が多々あります。これまでにない雰囲気の曲調を意識しつつも、聞いてもらえると「おっ! 下村の曲だ!」と感じてもらえるように作れたと思うので、いつもと違った私らしさを感じていただけるとうれしいです。 ――早く聴いてみたいです! 下村 少ない楽器で構成したアコースティックなオーケストラもあれば、全部打ち込みで作った楽曲など、とにかくバリエーションに富んでいます。あと、アレンジャーさんが非常にカッコよくアレンジしてくださって、作りながらワクワクしていました。そういったアレンジャーさんとの相乗効果でできあがった部分も注目してほしいですね。 現代の史実とリアルな若者の人となりを反映したシナリオ ――本作の舞台に渋谷を選んだ理由を教えてください。 礒部 社内で企画を共有した際、海外のユーザーがパッとビジュアルを見たときに「日本のココだ!」とわかる場所が、渋谷のスクランブル交差点だったので、迷うことなく渋谷にしました。 ――実名店舗も登場しますよね。 礒部 出る杭は打たれるという文化のアンチテーゼをメッセージとして伝えるために、現実世界の延長線上に本作の世界観を置こうと最初から考えていました。そのために実名店舗を登場させて渋谷のリアルな街並みを可能な限り再現しています。そうすることで、世界観への没入度を高め、本作のテーマに共感してもらえるかなと思ったからです。 ――実名店舗はリアルさを追求するための舞台装置の役割を担っていると。 礒部 ここまで渋谷を忠実に再現しているゲームはなかなかないと思います。それぐらいリアルな景色になっているので、楽しみにしていてください。 ――そんな渋谷を舞台に、真凛と佐理によるどのようなストーリーが展開されていくのでしょうか? 野島 本作の世界では魔法使いは忌み嫌われており、自身が魔法使いであるとバレてしまうと友だちすらも失う、それぐらい厳しい社会なのです。そのため、真凛は魔法使いであることをずっと隠しながら生きてきました。大学進学を機に渋谷に上京した真凛は、そこで魔法絡みの事件や事故に遭遇し、それがきっかけで魔法使いとして自由に生きることを決意します。 野島 対して佐理は正義感が強く、魔法の力を人々の役立てるために魔法取締官と呼ばれる職業に就いています。立場がまったく違う真凛と佐理は衝突をくり返すのですが……。といった感じのストーリーが展開されます。 ――プレイヤーは立場が違うふたりの視点から物語を体験することになると。 野島 本作は章仕立てになっていて、各章ごとに主人公が切り換わります。真凛の章で佐理が敵として出てきたり、その逆もあったりして、主人公たちのすれ違う姿を間近で体験できます。 ――すれ違うダブル主人公、そそられます! まだ情報が出たばかりでお話できる要素は少ないと思いますが、シナリオの見どころを教えてください。 野島 ネタバレになるので多くは語れませんが、真凛の人間性は見どころだと思います。他人との距離をうまく測れない、でも親切にされるとうれしい。だけど素直にうれしがらずに、つれない態度を取ってしまう彼の言動は見ていておもしろいと思います。 全章通してそんな真凛を見ることができるので、プレイしていると「またかよ!」と、ツッコみたくなる場面もあるかもしれません(笑)。そういった真凛のことを、佐理が自分の目的のために動かそうとする部分のやり取りも見どころです。 ――真凛と佐理の言動から目が離せません。先ほど野島さんは、自分の好きなシナリオを作れたとおっしゃっていましたが、今回のシナリオ制作で苦労したことはありますか? 野島 いつもファンタジー世界のキャラクターを描くことが多いのですが、今回はリアルな世界観かつ現代の若者をイメージしたキャラクターが数多く登場します。ですので、若者キャラクターの台詞は、礒部さんに念入りにチェックしてもらうようにしました。チェックのたびに変な言いかたになっていないかなと、ドキドキしちゃいましたね(笑)。 あと、史実の中に本作の魔法要素を混ぜ込んで、リアルとファンタジーが混ざった歴史を作りたかったので、実際の歴史も勉強し直しました。 ――リアルさの追求にも余念がないと。 野島 最初は面倒臭いと思っていたのですが、いろいろ調べ始めたらおもしろくなっていき、最終的にはすごく熱中しちゃいました。 ――若者キャラクターの台詞をチェックしてもらったとのことですが、若者の言葉などで衝撃を受けたものはありましたか? 野島 “モア”という女子高校生のキャラクターがいるのですが、現役女子高校生の方からモアに関するアドバイスを受けたときは表現しがたい驚きがありました。 礒部 フリューはプリントシール事業の部署もあって、女子高校生にプリに関するインタビューをすることがあります。その際、モアに近い感じの女の子を探し、社内のインタビュアー経由でその子たちから、最近の女子高校生のあだ名の付けかたや、しゃべりかたなどを聞き、それを野島さんに伝えてキャラクターに落とし込んでもらいました。 ――歴史もそうでしたが、キャラクターもとことんリアルを追求しているのですね。発売がますます楽しみになりました! 最後に読者の方へのメッセージをお願いします。 野島 現代の渋谷を舞台としたゲームになっています。そういったリアルな世界観を作るのは初めてなので、楽しんで作ることができました。ぜひ皆さんも楽しんでいただけるとうれしいです。 下村 礒部さんの熱いオーダーと気持ちを受け止めて、ひとつひとつの楽曲を作りました。素敵な世界観とともに音楽を楽しみながらプレイしてもらえるとうれしいです。 礒部 本作は同調圧力の生きづらさを感じているユーザーの方にはとくに共感してもらえるはずです。“抑圧と解放”を感じられるゲームシステムは特徴的で、とくにアクション面はほかの作品とは違った遊びになっています。 野島さんのシナリオや下村さんの音楽との相乗効果によっておもしろい作品に仕上がっていますので、皆さん楽しみにしていてください。同調圧力で個性を出せないあなたに。 2月26日からゲームの予約受付と、1stトレーラーの配信がスタート! 『レナティス』の最新情報は公式Xにて、順次公開される。フォローして新たな情報に備えよう。さらに本作の予約が2月26日からスタート。全国のゲームショップ、量販店、ウェブショップにて予約が可能となる。 同日には『レナティス』の世界観やゲーム性の一端が垣間見える1stトレーラーも配信される。こちらはフリューの公式YouTubeチャンネルから見られるのでお見逃しなく!
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