憲法裁判官の任命に「大統領権限代行の弾劾」がかかっている=韓国
ハン・ドクス大統領権限代行兼首相が、憲法裁判官を任命するかどうかで「弾劾の岐路」に立たされている。最大野党「共に民主党」は、ハン代行が憲法裁判官候補のマ・ウンヒョク、チョン・ゲソン、チョ・ハンチャン氏を任命しない場合、早ければ28日にハン代行の弾劾訴追案を国会に報告する方針だ。今のところ、ハン代行は弾劾訴追を受け入れてでも憲法裁判官を任命しない可能性が高く、「権限代行の権限代行」が発生する史上初の事態が現実化する可能性もあるとみられている。与党「国民の力」のクォン・ヨンセ非常対策委員長内定者は、憲法裁判官の任命同意案が国会で可決されれば、憲法訴願を出す意向を示した。「12・3内乱事態」に責任があるハン代行が、内乱を否定する与党の庇護のもと、国政の混乱をより一層深めているという批判が高まっている。 民主党のハン・ミンス報道担当は25日、国会で記者団に対し、「26日に憲法裁判官候補者3人の国会承認手続きが終われば速やかに任命することをハン代行に求める」と述べた。 国会は26日の本会議で、3人の憲法裁判官候補者の任命同意案を表決するが、在籍議員の過半数の出席、出席議員の過半数の賛成が可決定足数であるため、民主党議員(170人)だけでも可決できる。民主党院内関係者は、「罷免されていない大統領は捜査も逮捕も容易ではない。憲法裁判所の『9人体制』を完成させ、弾劾審判を早く完了するのが最も急がれる課題」だと述べた。 27日の本会議でハン代行弾劾案を報告すると前日に予告した民主党はこの日、早ければ28日にも弾劾案を議決すると述べた。弾劾案は、本会議の報告の24時間後から72時間以内に表決しなければならない。ウ・ウォンシク国会議長も憲法裁判官の任命を重要視しており、与党が反対しても28日または30日に本会議を開いて弾劾案を表決する意思が強いという。民主党役員のある議員は、「ハン代行は任命を拒否する意志が明確なのだから、わざわざ時間を無駄にする必要はない。ウ議長が週末でも本会議を開く意向があるようなので、土曜日(28日)にも表決ができるとみられる」と語った。 前日の国務会議で「法理解釈と政治的見解が衝突する懸案」だとし、憲法裁判官任命拒否の意向を示したハン代行の考えにはまだ変化がないとみられる。首相室関係者はこの日「ハン代行は外部日程もなく苦心中」だとし、「熟考する時間が必要であり、与野党協議の状況なども考慮しなければならない」と語った。与党が任命に反対している状況で「与野党の協議」は期待できない。民主党のある重鎮議員は「首相として大統領をきちんと補佐することも説得することもできず、国政が崩れたのに、ハン代行の思い通りに国を牛耳ろうとするなんてとんでもない」と批判した。 ハン代行は、憲法裁判所の尹大統領弾劾審判で「検事」の役割を引き受けた国会が、「判事」に該当する憲法裁判官の任命に介入することは問題だとみている。マ・ウンヒョク、チョン・ゲソン、チョ・ハンチャン候補者は国会が推薦した人たちだという点を問題視しているということだが、これは尹大統領をかばっている与党のクォン・ソンドン院内代表の主張と一致する。 同党のクォン・ヨンセ非常対策委員長内定者は同日、憲法裁判官任命同意案が国会で可決された場合、ハン代行が彼らを任命できるかどうか、憲法訴願審判を請求すると述べた。さらに「弾劾が流行し、どの党でも大統領を弾劾しようとする可能性がある。憲法に基づき明確にしておく必要がある」と述べた。一方、憲法裁判所のキム・ジョンウォン事務処長は17日、国会法制司法委員会に対する懸案質疑で、民主党のペク・ヘリョン議員の質問に対し、「国会枠の憲法裁判官3人を任命することは憲法の原則に反しない」という趣旨で答弁した。 ハン代行のこのような態度は、民主党の要求どおり憲法裁判官を任命しても、内乱罪による処罰などは免れないとみて、与党と保守層を頼りに行動した方が良いという政治的思惑によるものだという指摘もある。民主党のパク・ソンジュン院内首席副代表は同日、「文化放送」(MBC)のラジオ番組で、「(ハン代行には)今の政治地形に対する判断もあっただろう」とし、「内乱と関連し、今後の捜査で明らかになる部分まで考えたのだろう」と主張した。 ハン代行の弾劾案可決の定足数が、大統領基準の在籍議員3分の2(200人)以上なのか、首相基準の在籍議員過半数(151人)なのかをめぐる論議も、ハン代行の「何もしない戦略」の背景とみられる。民主党はハン代行が「首相」として「12・3内乱事態」に介入したことなどを弾劾理由に挙げ、151人の賛成で弾劾が可能だとみている。一方、ハン代行は(大統領基準の)「200人」に重きを置いているという。200人を満たすには、国民の力から少なくとも8人の造反が必要だ。 ただし、ハン代行が最終的に憲法裁判官を任命する可能性も残っているとみられる。もしハン代行まで弾劾訴追されれば、チェ・サンモク経済副首相が再び権限代行を引き継ぐ史上初の事態となる。可決定足数をめぐる議論が法的争いにつながり、さらに混乱を極める状況になりかねない。このため、与党内部からも憲法裁判官は任命すべきという声があがっている。親ハン・ドンフン派のパク・サンス報道担当はこの日「仏教放送」(BBS)のラジオ番組で、「憲法裁判官を任命せずに来年4月18日が過ぎれば、今の2人の憲法裁判官の任期が終了する。その事態になれば憲法裁判官の数が4人になるため、憲法裁判所が完全にマヒする」と述べた。内乱罪の捜査対象であるハン代行としても、憲法裁判所の弾劾審判まで進めるのは負担になるとみられている。 チャン・ナレ、コ・ハンソル、ソ・ヨンジ記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )