中国はふたつの戦争をどう見ている? 混沌のうちに、世界の覇権を握る魂胆か――。
例えば、スマホのファーウェイとかシャオミも、ウクライナ戦争が始まった初期の段階でロシア市場から撤退するって話だったんですけど、ロシアのネットショッピングで普通に売ってる......みたいなコトも多くて。これは中国政府の意図というより、中国社会の"緩さ"ゆえだと思います。 一方で、非軍需製品の貿易統計に目を向けると、中国の対ロシア輸出が大きく伸びているのは事実です。最も典型的なのが自動車で、昨年、中国の自動車輸出台数は約490万台で世界一になったのですが、そのうち約80万台がロシアに輸出されている。 もともとロシアの自動車市場は韓国、日本、ヨーロッパが強かったのですが、それを全部、中国メーカーがかっさらった形ですから、当然、『中国が戦争で漁夫の利を得ている』といった批判はあるでしょう。 では、中国企業は世界の批判を顧みず、平気でロシアと商売しているのかというと、そうでもなくて。例えば、ドローンで有名なDJIなど、西側の先進国相手にちゃんと商売ができている企業は、風評被害を恐れて、日本企業と同じような形でロシアへの輸出を自粛しています」 ここでも、中国が重視するのは「どの市場を大切にすることが商売にとって重要か?」という商売第一の現実的な視点のようだ。 ■中国は世界の覇権を狙っているのか? では「ガザ問題」についてはどうか? 高口氏が続ける。 「ガザに関しても、中国の主張は当初から一貫して『即時停戦』です。中国も中東地域からのエネルギー輸入に依存しているため、この地域の平和と安定が重要だという点では日本と同じ思いですし、中国にとって中東諸国はお互いにイデオロギーや人権に関する問題をあまり気にせずに商売できる相手でもある。 ですから、例えば日本でも最近話題の激安通販『SHEIN』なんかも、日本に来るずっと前から中東ではやっていたりと、民間レベルでも深いつながりがあります。 また、イスラエルとも、テクノロジー関連分野の産業での協力関係や投資も多いので『戦争なんかされると商売がやりづらくて迷惑』という気持ちは、ロシア・ウクライナ戦争と同じでしょう」 しかし、ロシア・ウクライナ戦争のときとは大きく異なる点がある。 「ガザの問題に関しては国連などの場でも『イスラエルのハマスに対する反撃は自衛権を超えている』と非常に強く批判しており、イスラエルの後ろ盾になっているアメリカへの批判もかなり厳しいものがあります」 この点に関しては、ガザへの無差別攻撃を続けるイスラエルをかばい続け、即時停戦を求める国連安保理の決議に何度も拒否権を行使してきたアメリカよりも中国の主張のほうが国際世論に近いようにも思える。 しかし、その背景に、習近平主席がブチ上げた「一帯一路」構想のために中東が肝心だからでは、と中国の下心を指摘する声もあるが?