【都内 “絶滅寸前” 屋台旅】火鉢の前でコーヒー、嬢も愛するホットドッグ、お祭り気分の縁日屋台…リピーター続々の3名店
かつて、都内には300軒近くのラーメン屋台があったという。だが、減少の決定打となったのが、2015年の都条例の規制強化だ。東京23区内にあった最後のラーメン屋台は、2024年に閉業した。それでも、客を引き寄せる名屋台は、各地に今も点在している。今回は、ラーメン・おでん以外のユニーク屋台を紹介! 【画像あり】商店街の入口にドーン!「石川屋」は地元の名物店 「出茶屋」(東京都小金井市)店主の鶴巻麻由子さんが、JR東小金井駅にふらりと降り立ったのはもう20年以上前。大学卒業後、神保町の喫茶店で店員を続けていたときだった。 「ずっと、空が見える場所で店を持ちたいと思っていました。転居先を探していて、理想の場所にたどりついたんです」 市の商工会の起業支援に、リヤカー屋台のプランで応募。手回しミルで豆を挽き、炭火と南部鉄瓶で湯を沸かす、エコなスタイルにたちまちファンがついた。 「1歳で初めて歩いたところをうれしく見ていたお客さんの子が成人したり、火鉢とコーヒーを囲む時間が重なって、いつの間にか親戚のような気分をもらっています」 現在は、梶野公園など市内のスポットのほか、園芸店「オリーブガーデン」の店先に、天候に左右されずコーヒーや自家製焼き菓子を味わえる「出茶屋の小屋」も開店。鶴巻さんのコーヒーをめぐる旅はまだまだ続く。 東京都新宿などで軽トラ屋台「ケニーさんのホットドッグ屋」を営むナイジェリア出身のケニーさんは、約10年前から、平日は夜の歌舞伎町で、土日は原宿の明治通りぞいで、香ばしく焼けた巨大粗挽きソーセージが名物のホットドッグを販売してきた。 「お客さんが喜ぶから、どんどん大きくなった。去年まで500円だった。でも最近、なんでも高くなったね。しようがない、こっちも100円値上げしたよ」 歌舞伎町の呼び込みや飲食店スタッフとは顔馴染み。挨拶をしていたインド人の黒服に話を聞くと、 「もうこの町の名物じゃない? 店の女のコもよく食べてるよ」と笑顔を見せてくれた。 JR西日暮里駅から徒歩8分、または京成線新三河島駅から徒歩2分の距離にある「石川屋」は、縁日メニューを “ほぼ網羅” し、毎日のようにお祭り気分が楽しめる屋台だ。 「土日祝は各地のイベントに出店してることもあるよ。祭りが続く夏場の遠征で10日ほど閉めたら、SNSで潰れたと勘違いされてた(笑)」 弾むような東京弁で語る石川定行さんは、地元育ち。幼馴染みが子連れで買いに来る。生食用のタコを使ったたこ焼きは、350円という安さだ。 「たこ焼きを作るには10分かかるから、待ち切れずに帰っちゃう人もいる。かと言って、作りすぎると残っちゃう。冷めたのは美味しくないしね。そこが、この商売の難しさだよ」 往来の人通を眺め、「そろそろかな」と焼きにかかる石川さん。すると案の定、客がわらわらと押し寄せた。30年のキャリアは伊達じゃない。 ■出茶屋(東京都小金井市) 場所:丸田ストアー、平林家のお庭、梶野公園ほか小金井市内 営業時間、定休日:Instagram(@dechaya)で要確認 珈琲(450円)、自家製の焼き菓子(350円) ■ケニーさんのホットドッグ屋(東京都新宿区ほか) 場所:本文参照 営業時間:15時~20時(原宿)、19時~27時(歌舞伎町) 定休日:不定休 ホットドッグ(600円) ■石川屋(東京都荒川区) 場所:西日暮里・冠新道商興会入口 営業時間:10時~19時 定休日:不定休(雨の日) たこ焼き(350円) 写真・松澤雅彦、鈴木隆祐 取材/文・鈴木隆祐
週刊FLASH 2024年11月12日・19日合併号