ひき逃げの時効をなくして 10歳息子を奪われた母「抑止にもなる」
埼玉県熊谷市議会は19日、死亡ひき逃げ事件の公訴時効撤廃に向けた法整備を進めるよう国に求める意見書を全会一致で可決した。意見書は、熊谷市の小4男児死亡ひき逃げ事件の遺族が意見書を出すよう訴えた請願が同日採択されたことを受け、総務文教常任委員会が提出した。同様の意見書は2022年にも県議会で可決されており、遺族は「国には可決を重く受け止めてもらい、早期の法整備を求めたい」と訴えた。 【写真】生前に描いた絵にユニフォーム……小関孝徳さんの遺品 意見書は、09年9月に同市で起きたひき逃げ事件について「犯人はいまだ検挙されておらず、愛する家族を突然奪われた遺族の心情は、想像を絶する」と指摘。殺人罪や強盗殺人罪は10年に公訴時効が撤廃されている一方、「死亡ひき逃げ事件は救護措置義務を果たさず被害者を死亡させ、故意に逃走を図る凶悪犯罪であるが撤廃されていない」と強調した。その上で、国に対し、時効撤廃に向けた法整備を検討するよう求めている。 意見書の採決に先立ち、小関孝徳さん(当時10歳)をひき逃げ事件で亡くした母・代里子さんが提出した請願が採択された。請願の紹介議員には、市議会各会派の代表者など7人が名を連ねた。請願書で代里子さんは「時効が成立してしまえば、息子をひき殺した犯人は罪に問われなくなってしまう。いわば『逃げ得』を許すことになりかねない」と心情をつづった。 紹介議員の一人、黒澤三千夫市議(志桜会)は「公訴時効が5年後に迫る中、遺族のために地元議員として力になりたいと考えた。今後も国の法整備に関する動きを注視していきたい」と話した。 事件に関する情報提供は熊谷署(048・526・0110)や、代里子さんのブログへ。【加藤佑輔】 遺族の小関代里子さんは、2019年から街頭やインターネット上で死亡ひき逃げ事件の時効撤廃を求める署名活動を始め、これまでに約14万5000筆を集めた。こうした粘り強い活動が市議会を動かし、今回の可決に至った。代里子さんが現在の心境を語った。 ◇「犯人捕まえたいという思いだけではない」 熊谷市議会が死亡ひき逃げ事件を重くとらえ、意見書を可決したことに深く感謝しています。 ただ、同じ趣旨の意見書は22年3月にも県議会が可決し、国に提出されましたが、以降、時効撤廃に向けた審議は進んでいる様子はありません。国は市議会と県議会の両方で意見書が可決されたことを重く受け止め、早急に法整備を進めてもらいたいです。 私が時効撤廃を強く望むのは、息子をひき殺した犯人を捕まえたいという思いだけではありません。今後、事故を起こしてしまった運転手に「捜査の手からは逃れられない」と思わせることで、逃走に至る犯人を減らし、ひき逃げ事件の抑止につなげたいと考えているのです。 事件の発生から今年で未解決のまま15年となりました。長い年月がたってしまいましたが、私は犯人が検挙され、事件の真相が分かるその日まで決して諦めるつもりはありません。事件についてどんなささいな情報でもいいので、ご提供ください。