タイ在住、“お坊さん”の顔も持つ異色のプロ・中村映禅にインタビュー。ゴルフや師匠・奥田靖己との出会いとは?
「お通夜などで説法はそれなりにできるんですけど、腹のなかから話をしていないから、もうしゃべれなくなってきて、“坊さんイップス”になったんですよ」 ゴルフでのイップスは、真面目で考えすぎ、練習しすぎな人がなりやすいという。 「でも、ちゃんとしたいという気持ちはむっちゃありましたよ。自分だけ何でこんな感じに思ってしまうんかなあと」 この頃、奥田靖己と出会う。奈良の“坊さんコンペ”に来ていた。
「最初の印象は最悪でした。『何やその服は』なんてカマされて、嫌な人やなあと。同組で回りパープレーで同点。でもボロカス言われました。『打ち方は酷い、何やそのフィニッシュ、ゴルフを何にもわかっとらん……』。失礼な人やなあ、二度と会いたくないわと。周りの皆にも言っていました」 数カ月後、同じコンペで再会。その日は土砂降りだった。 「奥田プロは『ゴルフ日和や、行くぞ』言うて。皆カジュアルウォーターとかやっとるのに、涼しい顔して水しぶきも上げんとチーンと打つ。技も何もかもが強烈にすごいと思った。次元が違った。前に“同点”と思った自分が恥ずかしくなって。コンペ後、弟子入りさせてもろうたんです。ゴルフで生きていきたいですと」
来るものは拒まない奥田。その後、多くのことを教えてくれた。奥田の師匠、高松志門の合宿にも行った。法要後、着物と袈裟と足袋のままコースへ行き、駐車場で着替えたこともある。 「35歳までかなりきっちり教えていただきました。一番は『グリップはやわらかく握っといてマルく振れ』。皆、自分が決めたスウィングをやろうとするけど、プロは風や景色やライをみてスウィングを変えていく。全然違います」 当時のことを奥田に聞こう。 「最初は赤いシャツ着て、チャラ男みたいな感じ。スウィングも縦に振っているからフックしか打たれんような。ボールは飛んでいたけど、いろんなことはできんプロという印象です。そしたら2回目のとき、僕が面白いことをやったから、この人に付いていこうと思ったらしい。あんな真逆なスウィングやのにホンマにやるんかいと。でもやる限りは僕も引けませんから、ずっと続けてね。僕のマネはとことんやりよった。歩き方も雰囲気も。僕も師匠をマネしてたから痛いほどわかるんです」 ※週刊ゴルフダイジェスト10月8日号「お坊さんゴルファー中村映禅」より一部抜粋
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