【ウクライナ戦争終結へ私たちが知っておくべきこと】プーチンとゼレンスキーは痛みを受け入れることができるのか
改めて問う「ロシアはなぜ、攻撃したのか」
トランが当選して以降、ウクライナ戦争の終結に関する議論がさらに活発になっている。そのような中で、本論文は、「NATO加盟を伴う安全保障と名目上の領土の一部移譲という妥協が、永続性のある平和を生み出す唯一の方法」だと主張する。 これに対し、12月7日にパリで行われたトランプ・マクロン・ゼレンスキーの三者会談で示されたトランプの考え方は、報道によると、(1)ウクライナのNATO加盟は支持しない。ただし強力に武装したウクライナを望む。(2)欧州の部隊が停戦監視に当たる。ただしこれはNATOとしての作戦ではない、というものだったらしい。 この考え方は、ウクライナのNATO加盟について、本件論文と異なっている。ただし、トランプはまだ具体的な方策を明らかにしていないし、トランプ自身、今後の話し合いの中で考えを変える可能性もある。 本稿では、今後具体的な解決策が示された場合に、それが真に永続性のある和平につながるかを判断する基準として、以下の点を指摘しておきたい。 第一に、戦争を如何に終わらせるかは、それが如何に始まったかを考えることが重要である。この戦争は、ウクライナがNATOに加盟しそうだから、ロシアがそれを抑えるために起こした戦争ではない。 2008年のNATOブカレスト・サミットは、ウクライナのNATO加盟に関する「合意」を高らかに謳ったが、それからロシアが侵攻を開始する22年までの14年間、ウクライナのNATO加盟は事実上一歩も進まなかった。この単純な事実を、ロシアが把握していないことはあり得ない。 プーチンがウクライナに侵攻したのは、ウクライナをロシアの支配下に置くためである。NATO加盟を凍結すればプーチンが侵略を止めるという観測は完全に間違っている。 もう一つの事実は、ロシアがNATO加盟国および核保有国には本格的な侵攻を仕掛けたことがないという事だ。よってこの戦争を終わらせるには、ウクライナがNATOのような集団防衛機構に加盟するか核保有国となるかしかない。それ以外の方法で一時的に停戦しても、ロシアの態勢が整えばプーチンは再び軍事的・政治的な侵略を仕掛けてくるだろう。