認知症が原因の行方不明が増加の一途 介護殺人、「衰え」狙い犯罪も「社会全体で対応を」
■高まるリスク
認知症の高齢者による1人暮らしには、さまざまなリスクが伴う。医療関係者によると、本人が気づかないまま症状が進行した場合、外出時の迷子や事故▽自宅の火災▽服薬ミス▽金銭トラブル-などの恐れが高まるとしている。
前出の警察幹部は「高齢者の1人暮らしに伴うリスクを考慮すれば、認知症の行方不明者対策には家族の存在が不可欠だ」と語るが、確実に進行する高齢化は、家族の介護疲れによる痛ましい事件も生んでいる。
昨年1月、松山地裁で行われた裁判員裁判では、自宅に火をつけて同居中だった92歳の母親を焼死させたとして、現住建造物等放火と殺人の罪に問われた50代の男(当時)に、懲役6年の判決が言い渡された。
事件は3年6月、愛媛県今治市で発生。現住建造物放火罪と殺人罪の罰則は、いずれも「死刑または無期、もしくは5年以上の懲役」の重大犯罪だが、寝たきりの母を介護してきたという被告の男は、精神障害による被害妄想や判断能力の低下があったとされた。
高齢者が犯罪集団の標的にされるケースもある。今月には、認知症の高齢者ばかりを狙って相場よりはるかに高い価格でアパートを売りつけていた4人組が、準詐欺容疑で警視庁に逮捕された。
別の警察幹部は「増え続ける認知症高齢者への対応は、われわれ警察を含め、国民全体で取り組まねばならない段階にきているのではないか」と話した。