紀伊半島の「最南端」に大変化!? 無料の高速「串本太地道路」工事進行中! 関西エリアの交通を一変する「巨大ネットワーク計画」とは
ほかにも様々な役割を担う「串本太地道路」
医療面での役割もあります。 「串本太地道路の区間内に古座川町があり、ここから比較的近い救急医療施設に『くしもと町立病院』や『新宮市立医療センター』があります。開通によってやはりアクセスは向上しますが、これらは二次救急医療施設です。
より重篤な患者を受け入れられるのは、三次救急医療施設です。古座川町から田辺市の三次救急医療施設『南和歌山医療センター』まで現在は約70分かかりますが、串本太地道路とすさみ串本道路の開通後はアクセス性が向上することで約49分まで短縮される見込みです」(前出担当者) 一方、観光面について串本太地道路の周囲に見どころがあるかと事務所担当者に聞いたところ、「有名なところでは、『橋杭岩(はしぐいいわ)』などの奇岩や、厳密には観光地ではありませんが最近話題となっている民間ロケット発射場の『スペースポート紀伊』があります」との回答でした。 橋杭岩は、串本町の沿岸部にある岩が直線的に並ぶ場所。橋脚のように見えることから、この名が付けられたそうです。 一方、スペースポート紀伊は民間のロケット発射場。3月に打ち上げられた初号機は残念ながら自律的な飛行中断によって打ち上げ失敗となりましたが、2024年12月に2号機の打ち上げが予定されており、以降、3号機、4号機の打ち上げも期待されます。 串本太地道路の開通によって、地域の新たな魅力を発見できる他、宇宙とのつながりも感じられそうです。
津波被害を防ぐために必要な「時間」
なお、串本太地道路がいつ開通するかは、未定です。また、工事の難しさから、事業化が2018年度に決定しながら、工事着手は2021年度となりました。その難しさとは、以下のような地理的な理由によるものです。
「道路をつくるためには測量や設計を行い、計画地の用地取得に御協力いただいて始めて工事に着手できます。また、串本太地道路は津波の影響を避けるため、山側につくっています。工事においても現在の国道42号方面からJR紀勢本線の線路を越えて現場へたどり着く工事用道路を整備するのにも、時間がかかります」(担当者) もっとも、山側に新たな道路をつくることは津波被害予防以外のメリットもあります。串本太地道路は並行する既存の国道と比べて、直線的な経路となっています。山や谷をカーブで避けて通るのではなく、トンネルや橋を通すことで、直線的な道路ができ、ドライバーの負担が軽減されます。 よって、開通後はそれまでと比べて走りやすくなる期待があります。 前出の筆者の知人は、アクセス面でも「現在は新宮市から和歌山市まで約3時間かかるため、それが短縮されるのでありがたいです」と話していました。 ※ ※ ※ 紀南河川国道事務所の担当者は、地元の人々へのメッセージとして「災害時の交通確保、救急医療活動の支援、広域周遊観光の支援を目的に近畿自動車道紀勢線の整備を進めております。早期供用に向けて頑張ります」とコメントしました。 2024年は、南海トラフ地震の臨時情報が発表されたこともあり、串本太地道路やそれと接続する自動車専用道路は、まさに紀伊半島南部の「生命線」となりそうです。
藤麻迪