黒沢清監督『Cloud クラウド』ヴェネツィア映画祭でお披露目、深夜にファン1000人が集結
第81回ヴェネツィア国際映画祭のアウト・オブ・コンペティション部門で30日、黒沢清監督の『Cloud クラウド』がワールドプレミア上映された。 黒沢清監督『Cloud クラウド』ヴェネツィア映画祭でお披露目、深夜にファン1000人が集結 上映前の会見では、第97回アカデミー賞国際長編映画賞の日本代表に選ばれたことが報告された。黒沢監督は「本当に純粋な娯楽映画を作ろうというところからスタートした作品です。ヴェネツィア国際映画祭への出品も含め、大きな名誉みたいなものと縁があるとは思っていなかったので大変驚いています。僕の大きな楽しみは、もしアカデミー賞にノミネートされるようなことがあれば、主演の菅田将暉さんが米国で大いに知られることになるだろうと想像すると、とてもそれはうれしいことです」と喜びを語った。 『Cloud クラウド』は菅田演じる主人公の「転売ヤー」が、インターネット上で標的となりその脅威が拡大していく恐怖を描く作品。黒沢監督は01年『回路』でもインターネットを題材にしており、その対比を聞かれると「当時はインターネットというものがまだ不気味で、その中に何か邪悪なものが潜んでいるのではないかというフィクションがもう想の中で成立した時代でした。それから20数年たった今、インターネットはごく当たり前の誰でも使う普通のツールになっている。今や先が見通せない、全ての人間の心にある欲求不満、あるいはゆがみのようなものが異常に増幅され集結してしまう。その発想がこの映画の原点になっています」と説明した。 主演の菅田については、「その世代で人気、実力ともに圧倒的にNo.1の俳優。彼はあらゆる役を演じ分けることができる」と絶賛。その上で、「主人公は曖昧(あいまい)な人にしようと考えていました。彼の非常に高度な演技力があれば、曖昧さが曖昧さとしてそのまま観客に伝わるのではないかと思い、それに見事に応えてくれた」と太鼓判を押した。
レッドカーペットでは、5度目のヴェネツィアとあって「クロサワ」コールに迎えられた黒沢監督。ファンのサインや写真撮影にも快く応じ、会場前で待ち受けた映画祭ディレクターのアルベルト・バルベーラと熱い握手を交わした。 深夜の上映にも関わらず、会場は満席となる1000人以上の観客が詰めかける熱気。上映後は、盛大なスタンディングオベーションが沸き起こり、黒沢は照れながらも安どの笑みを浮かべ笑顔で応えていた。 『Cloud クラウド』は、 9月27日から全国で公開される。 記事:The Hollywood Reporter 特派員 鈴木元
鈴木 元