GPファイナルでV3を狙う羽生に死角はあるか?
もうひとつの死角は、出来栄え点、演技構成点に関する不安だ。 フィギュア関係者の一人は、「NHK杯での羽生選手の出来栄え点、5コンポーネンツについては点数が出過ぎではないか、という意見もある。演技構成への評価は、あくまでも、審判一人ひとりの主観的なものなので、今回のように羽生選手一人が突出すると、ついつい高い数字が出る傾向にある。 だが、グランプリファイナル、来年の世界選手権という世界のトップが一同に揃う大会では、相対的に見られるので、その中で、羽生選手の出来栄え、演技構成の部分がどう評価されるのか。芸術性では、第一人者のパトリック・チャンは、4回転はひとつだが、安定して高い出来栄え点と、演技構成点を取ってくる。またNHK杯からGPファイナル、日本選手権と、羽生には、試合出場の日程も詰まってきて疲労も生まれてくる。そういう中で、どういう結果を残すのか。今後の羽生の向かう方向性がハッキリするのでは」と言う。 パトリック・チャンに敗れたスケート・カナダでは、2点以上の出来栄え点を加算したエレメンツは、ひとつもなかった。だが、NHK杯のフリーでは、冒頭の2つの4回転ジャンプに、それぞれ「2.86」、「2.57」と高い出来栄え点がつき、トリプルアクセル+ダブルトゥループの連続ジャンプには、「3.00」の満点がついた。また演技構成点も「97.20」をマーク。パーフェクトの「10.00」を合わせて計13個ももらっていた。これらの得点がプラスして、脅威の300点超えを生み出したのだが、これからは、「ジャンプの成否」と共にいかに出来栄え点をプラスするかの「ジャンプの質」が問われる時代になっていくと考えられている。 スケート・カナダの演技構成点で「95.16」をマークしたパトリック・チャンと同じリングで羽生が比較された時にジャッジは、どういう評価を下すのか。前人未踏のV3への死角がないと見られているGPファイナルでこそ、羽生の強さの真価が問われることになる。